この恋をどうすればいいかわかりません。


授業も平気でサボれちゃう子だって、そんな元カノの印象が残っちゃう。


目の晴れた不細工な元カノに、授業をサボる女が追加されてしまうのに。

 

やっちゃった感満載の最初で最後のメッセージ送信。


まぁでも、もういっか...割り切らなきゃ。


なんだかもうタイミングとか間とか全く噛み合わなくて、全体的にぐだくだな自分に力が入らない。


そのままずるずるしゃがみ込んだ私は、「みはねはみはねだね。うっかりちゃん」とチサからトドメを頂戴して撃沈した。


情けない顔でチサを見上げたそのとき、


「うわっ、」


思いがけず、手のひらのスマホがブルッと振動した。


びっくりしてうっかり落っことしそうになったのを寸でのところで受け止めて、ダイレクトメールか何かであろうそれを確認する。


と、


画面にはダイレクトメールではない差出人と用件がしっかりくっきり浮かび上がっていた。


心臓が止まるかと思うくらい飛び跳ねて、止まらないんじゃないかと心配になるくらいに激しく加速を始める。


血の気が引いてふらふらになる頭で確認すると、信じられないことに朝日君からのレスが届いていた。


【終わったらすぐに教室まで迎えに行くから待ってて。俺も、話がある】


初めて受信した朝日君からのメッセージに体が固まって動けなくなってしまった。


「...朝日君から、なんか、朝日君も話があるんだって」


授業中のレスということと、朝日君も話があるということに驚いたのかチサの顔もびっくり仰天になっている。


これは、もう、決定打なんだろうか。


昨日感じた嫌な予感よりもっと鋭くて、どろどろした嫌な予感が全身を駆けめぐる。


朝日君も、私と同じようにもういい加減にしないといけないって思った...ということなんだろうか。


同じ、、。


どうせ同じなら、別の意味で同じがよかったなと女々しくなるとまたすごく泣けてきた。


「頑張れっ、みはねっ!!」


チサの激励が青い空にまで響きわたって、ついでにバシッと叩かれた肩が鈍痛並に痛かったけれど、それはすこぶる嬉しい励ましで。


涙なんてどこかに吹っ飛んでしまった。


ありがたいことに、この一件で私は自分の知られざる一面を発見できた。


わりと打たれ強いのかもしれない。


べそでのろまでウジウジだと思っていたけど、実際は自分が思っていたより泣き虫ではなかったように感じられて、それだけでも発見できたのなら自分の経験値にもなれたのかなとまんざら悲しいだけでもなかった。


「がんばるぞっ!」


一歩でも半歩でも、それで素敵な女の子に近づけるなら頑張る意味はきっとある。


意気込んだ私を見て笑顔をくれたチサはその後一言もこの話題には触れる事はなかった。


じゃあ今度は私がと、悩みを聞いてもらったお返しにチサの恋愛相談を受けて1時間目のオサボリタイムは終了した。


残った授業は出来うる限り集中するよう努めて、やれるだけ朝日君のことは考え無いよう科目に目を向けた。


いつも授業の後は情報を詰め込みすぎて疲れるのだけど、今日はいつもよりたくさんの集中力も使ったせいでふらふら感が二割も増している。


まだ三時間目しか授業を受けていないし、実際1時間サボったのだから2時間の勉強タイムだったというのに、頭はもうヨレヨレ状態。


しかも、二階フロアのトイレが一杯だったため一番遠い一階の渡り廊下の向こうにあるトイレにまで走る羽目に。


10分しかない中休憩、急がないと遅刻してしまう私はふらふらの頭で廊下をダッシュしていた。


「ベル鳴っちゃうー」


一階トイレも三年生で溢れていて、二年の私は割り込むことも出来ず最後まで順番を待っていた。


残り時間5分。


間に合うかどうかギリギリのところでもう少し頑張って加速しようと底力を出したと同じタイミングで、渡り廊下を挟んだ裏校舎から小さな声が聞こえてきた。


反射で足が止まる。


そして、これまた条件反射が発動して聞き耳を立ててしまう。


盗み聞きなんてしたくないのに、直ぐそばで成される会話が第三者に聞かれてもいいものかいけないものか確認してみたくなるのは人の性なんだろうか。


そして、そこにいるのが誰なのかも漏れなく探るのは興味でしかないんだろうか。


そんなことを考えつつ、相手に気付かれないよう壁からそっとこっそり状況を窺う。


「...好きなの、朝日君」


そこにいるのが誰なのか、そして誰だったのかが判明するのと同じくして、動きが止まる言葉が耳に飛び込んできた。


こ、

これって、


間違いなく私が二ヶ月前に朝日君にしたものと同じ、紛れもない告白だった。


しかもすっごく可愛くて細くて、同じ学年なら知らない人なんかいないだろう端市美奈(はたしみな)さんが朝日君への告白。


とんでもない現場に遭遇してしまった私はパニクってしまって、悪いことをしているわけでもないのに咄嗟に隠れてしまった。


好きな人が誰か別の、しかも可愛い子から告白されているのを目撃して動揺せずになんていられない。


そんな度胸座っていない私はどうしようどうしようと焦る一方で、朝日君がなんて答えるのかも同じくらい気になってしまった。


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