この恋をどうすればいいかわかりません。

サボったなんて親にバレたら痛いなぁと心配しつつ、でも昼休憩まで待てなくて授業をサボった私はチサを連れて屋上へ上がった。


10月末の空気はとても澄んでいて、腫れてじんと熱い目元を優しく撫でていく。


少し冷たいけれど清々しい風が、腫れたそこにはちょうどいい保冷剤になっていて気持ちがいい。


背の高い柵に凭れて、昨日の放課後からその後の出来事やそれまで胸につっかえていた事とか私の決意なんかをポツポツ話して聞いてもらった。


言葉にして、自分の感情も織り交ぜて伝えるとより現実的で実感がわいてくる。


あってるんだと思っていた仮説も、口に出すことでみんな当てはまるようにさえ感じた。


ゆっくりだけどちゃんと伝わるように話をして、話し終わった後チサはどうしてか難しい顔をして唸っていた。


「んー、でもさ、それって朝日君には何も確かめてないわけだよね?」


「...う、うん」


「朝日君と別れるにしてもまず、朝日君の気持ちちゃんと確かめた方がよくない?」


それは確かめるまでもない。


「昨日、言ってたの。お兄ちゃんたちにからかわれちゃったときに、私との事否定する、みたいな言葉」


そんなんじゃないですっ!って、力強く否定していた。


あからさまにそうなんですとか言うことはないとはいえ、きっちりきっぱり否定されたら心も折れそうになってしまう。


私たちの関係を頭から否定したとは言い切れないし、卑屈になってるからそうとしか受け取れなかったのかもしれないけど。


雰囲気と感じから、付き合ってるって事を誤解されたくなかったような空気が伝わってきた。


それに、


「深瀬君に独占欲かってからかわれたときも、強く否定してたし...」


私の中では決定的だった。


「だってそれって、人によるでしょ。こいつは俺のだってガツガツ独占欲だしてくるタイプと恥ずかしくてガツガツいけないタイプがあるし。朝日君てガツガツ系には見えないし、独占欲だよって言い切る人には思えないんだけど」


チサの言うことも尤もだと思う。


確かめもしないうちから勝手に一人で決めて、そうなんだと思いこんでる事は否定しない。


ちゃんと付き合ってると思える事ならいくつもある。


一緒に帰ろって誘ってくれるとこ、昨日は手を繋いでくれた。


それは付き合ってるからで、好きな子じゃないとしないんだって考えることも出来る。


でも、


「実は私たち、メールとかそういうのこの二ヶ月全く無いんだよね」


どれだけ付き合えている可能性を並べてみても、付き合っているなら出来るであろうプライベートな領域に踏み込むという事が、私たちには丸でなかった。


私からメールをすべきだったのは間違いない。

分かってる。痛いほど。

どれだけ何か送ろうとしたか、考えたらきりがない。


だけど、


「メールをくれるか、待ってたの。私の最大の賭、みたいな」


私からメールを送ったらきっと卒のない答えが返ってきていた事は想像できる。


彼は無視なんてしない人。


だからこそ、賭けてみた。


駆け引きなんてもの出来ないけれど、これが駆け引きかなんて分からないけど、でももし、彼の中に私が少しでもいるなら...。


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