この恋をどうすればいいかわかりません。
上のお兄ちゃんはちょっと過保護なところがあって。
年の離れた兄弟だからか、私を猫っかわいがりするきらいがある。
今年から立派な社会人一年生で、六つも離れているから心配で仕方ないのだと両親は言っているけれど、心配しすぎだと思う。
たまたま帰ってきて私が泣いていたから、離れていた分余計に心配度がマックスになるのだろうか。
泣いたくらいであんな派手に心配されたら、出る涙もびっくりしてでてこれずに枯れてしまうというもので。
恭哉兄ちゃんに心配しすぎなところをシスコンだとからかわれて、いつもそれで喧嘩になっていた。
下のお兄ちゃんと本当に兄弟なのか信じられないくらい真逆の二人は、いつもその真逆が原因でもめている。
両親二人はわりとドライと言うかのほほんで、私の目元が腫れていても何ら変わらない反応だったというのに...。
「いってきまーす」
「いってらっしゃーい」
「気をつけるんだぞー」
呑気な大学生に見送られて家を出た私は、今日自分がすべき任務に押しつぶされそうになりながら折れないよう励ましを繰り返して学校へ向かった。
「あれっ、今日はメガネなんだね」
教室に入り、自分の席に着くと同時にチサが駆け寄ってきた。
実は保険として途中でメガネを装備していた私はどことなく曖昧に「ま、まぁね」と受け答える。
本当に見えにくい時用で作った黒縁メガネを、腫れた目元のカムフラージュのためにつけたのだ。
黒縁にしたことでフレームレスより幾分か隠せそうな気はしたが、
「あれ、なんかちょっと目元腫れぼったい?」
私の顔をのぞき込み、メガネの向こうの目をじっと観察する。
思ったほどの効果は得られていないっぽい。
もらった痔の薬の効果も今ので限界なんだろう。
「あ、うん、まぁ...腫れて、る」
女の子同士でも腫れてる顔を見られるのは恥ずかしくて、チサの顔を直視できずに俯いて隠した。
きっとどうして腫れてるのか聞きたくて、でもなんて聞いていいのか困ってるはず。
泣いて腫れているのは明らかだけど、そこまで突っ込んで聞いていいのか迷っている雰囲気が痛いほど伝わってくる。
普段は元気でちゃきちゃきだけど、肝心なところでは人のプライベートにがつがつ上がり込んでくることはしない。
チサはそういう子で、察しがいいから大方筋道は立てられるし原因もすでに行き当たっているけどそれをどこまで突っ込んで確かめて良いか気にするタイプだ。
でも放置とかじゃなく、どうすればいいのかあたふたするわけでもなく、痛んだ心を読み取ってくれているからそばで優しく見守ってくれる人。
だから私も話を切り出しやすく、自分のペースを保っていられるんだと思う。
矢継ぎ早に聞かれると、勢いに負けてしまうから。
「チサ?話を、聞いてくれる?」
レンズを通して窺ったチサの顔はやっぱり優しく微笑んでいて、こんなに鈍くさい私を暖かく受け入れてくれた。
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