この恋をどうすればいいかわかりません。

 

走り去るのではなく、余裕の仕草で歩き去っていく朝日君は朝日って名前でも夕日がよく似合っていた。


夕日に溶けて、姿が見えなくなるまで見送る私をお兄ちゃんが強く引っ張った。


乱暴すぎて、ほぇーっとなっていた私は思いきり体をよろめかせる。


「いつまで見送ってんだよ。おら、行くぞ」


気分よく目に焼き付けていたのに、急に引っ剥がされて不満も頂点である。


「ほんとだったら今頃一緒に歩いて帰ってたのに。お兄ちゃんが勝手に送ってくなんてきめちゃうんだもん。酷いよ」


やっと二人で並べて、やっと二人で話ができたのに...。

一緒に、帰りたかったな。


もしかしたら大きな進展だったのかもしれないと思うと勿体なくて、なにより進展だったかもしれない時間を奪われたことが悲しくて仕方なかった。


「相当惚れ込んでんなぁ、みはね。まぁ無理もないか、あんだけの男前ならいつまでも見ていたいよな」


いつまでも見ていたいのに、邪魔しないでほしかった。

分かってるならなおさら察してほしかったのに...。


「でもどう考えてもみはねとは釣りあわねぇだろ。俺に似てないからモテる顔してねぇし」


言いつつ私のほっぺをぐりぐり突っつく。


どれだけ嫌がっても止めてって言っても止めてくれないので、兄の気が済むままにする方が早く解放されることを体で学んでいる私は放置。


しばらくのグリグリタイムを堪え忍ぶ。


やりたいようにさせていたら、思った通りすぐに離れた。


「格差恋愛ってやつ?今流行じゃん」


兄に乗っかって勝手なことを宣う亮だが、違うと否定できない分大人しくやり過ごすしかないことも悲しいかなちゃんと学習している。


お兄ちゃん二人は目鼻立ちもはっきりしていて背も高くかっこよくてモテモテなのに、私は顔の作りはどちらかというとはっきりしているくせに可愛くはなくおまけにちんちくりん。


パーツとパーツの組み合わせがよくなかったのだろう、残念な仕上がりとなっている。


どうしてお兄ちゃん二人にだけ良い遺伝子が行ってしまったのか悔しい思いを何度となくしてきた。


今はもう、この顔で一生を送らなければいけないことを覚悟しているため、覚悟していなかったときに比べれば悔しい思いをすることも少なくなっている。


隣の芝生は青く見える的なものなのだと、今回も嘆く心に言い聞かせた。


すると、歩調を合わせるのにいっぱいいっぱいだった歩調が前触れもなく急に止められた。


兄が歩くのを辞めたのだ。


「つか、遊ばれてるんじゃねぇよな、みはね」


厳しい顔で口元に手をやる。


え、


あそ、ぶ??

遊ぶってまさか、あの...


その意味はさすがの私にも理解は出来る。


俗に言う、あれだ。

好きでもないのに付き合って、それで、その先もそうなってしまって、あまつさえ惚れて惚れて惚れまくったあげくに捨てられるという残酷なやつ。


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