この恋をどうすればいいかわかりません。
いきなり差し出された手の意味が分からず、そのまま眺めて、
考えたけどやっぱり意味が分からないので頭に疑問符を乗せたまま朝日君を見上げた。
「いや、手ぇ繋ごうかってことなんだけど」
困ったのと恥ずかしいのと、両方いっぺんな顔をした朝日君がふんわり微笑んで小首を傾げた。
その笑顔がまた、紙に見えて、また放心してしまうとこだった。
「あっ、そ、そう、なの?」
「ん、まぁ」
「ご、ごめんなさいっ、私、わかんなくてっ」
慌てて手を伸ばして彼の指先に触れて。
それだけなのに、体全体でびくつかせてしまった。
そんな私の手をごつごつしてたくましい手のひらが包み込む。
包んで、手加減しつつも強く握られる。
すっぽり、朝日君の手の中に自分の手が収まっていた。
初めて、
付き合いが始まって初めて手を繋いで、初めて彼氏彼女っぽいことの第一歩を踏み出せて、目の前が激しく滲み始めている。
好きな人と手を繋ぐって、こんなにも甘いものだったんだ。
付き合うとはなんぞやも理解してない女が自分から付き合ってとか言うなんて、どれだけ身の程知らずだったんだろう。
手を繋ぐだけで泣きそうになるなんて知られたら、きっと朝日君に呆れられるはず。
何にも知らずによくまぁ、思い切ったな、って...
「すげぇ、ちっさくて、柔らかい手...」
可愛い...って、そう後付けした朝日君の顔には、呆れなんて類の言葉を見つけるのか難しい笑顔が浮かんでいた。
手を繋がれてしかも柔らかいとか言われて、可愛いまで付け足されてしまった私は心臓ばくばくで。
そして、罪悪感。
ばか。
バカみはね。
朝日君がそんなこと思う人間だって一瞬でも思うな。
相手に失礼だ。
「ごめん、ね。朝日君」
頭の篩にかけるよりはやく、口から勝手にごめんが滑り出ていた。
「ん?何?どれのこと?」
いきなり謝られて、何のことか思い当たらない朝日君が探るようにのぞき込んでくる。
ちっ、
近いっ。
普段から朝日君にはこの距離が当たり前なんだろうか。
にしても近くて、私が背伸びをしたらうっかり鼻とかぶつかってしまう距離。
他の女の子にも、こんな距離から話しかけたり顔をのぞき込んだりするんだろうか。
聞き取れない言葉を聞くときも、こうやってこの距離で顔と顔を合わせるんだろうか。
光輝って、名前で呼んでいるあの仲良し女の子二人にもこんな距離感で話をするんだろうか。
「...あ、うううん、さっきの、もろもろ、からかわれちゃったりとかしてたから」
さっき考えた事なんて口に出来るはずもなく、元々ちゃんと謝らないといけないと思っていたことを伝える。
すると、繋いでいた反対の手が伸びてきて後頭部を撫でていた時とは違う手つきで頭をタップされた。
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