この恋をどうすればいいかわかりません。


ケラケラ笑って近寄ってきたのはいつも朝日君とよく一緒にいる女の子達で、羨ましいなぁと常に感じていた相手だった。


無性に胸が軋む。


「...たくお前らは」


深い朝日君の溜め息が髪を揺らした。


「こんなとこで襲うかよばかっ。俺のこと迎えに来てくれたんだけど居なくて帰ろうとしたとこでちょうど出会った俺が声かけたから、びっくりして飛び跳ねたときに後ろのドアで頭ぶつけたんだよ。お前らがサボった授業のノート写してなかったら俺が先に迎えに行けて頭もぶつけてなかったんだよ」


的確に事情を説明されたわけだけど、あんな一瞬で私の行動が分かってしまうなんてどれだけ頭が回る人なんだろうか。


感心しすぎて目をひたすらぱちぱちすることしかできなかった。


「襲うなら別のとこでやるってさ」


「話聞けよお前っ!」


悪ふざけした深瀬君に心底呆れた感じの朝日君がキャンって噛みついた。


なんだか、知らなかった朝日君の顔が見れて嬉しい。


「そんなことより彼女大丈夫なのー?なんか、ごめんね」


「ごめんね。てか、でも、光輝がもっと気をつけて声かけてりゃ頭ぶつけなかったんじゃない?」


こめかみのあたりに指を乗せて、その後指をスナップさせる。


「あ、あー、うん、そうだ、そうだよね」


提案がまさにその通りであるかの如く、激しく頷き繰り返している二人。


もっともらしく聞こえるのは私が間違えているのかなんなのかさえ分からない。


「もっと彼女との間合いとか勉強しなよ。彼女の行動パターンとかちゃんと分かってない光輝が悪い」


「そうだそうだ、光輝が悪いっ。てことで、あたし達帰るねー。ノートありがとー光輝」


言いながら遠ざかり、教室に入った二人が鞄を持ってまた出てきた。


その間もきゃっきゃ何か言って笑っている。


深瀬君と朝日君の前で止まり、持ってきた鞄を二人に渡す。


当たり前のようにそれぞれ鞄を受け取ると、深瀬君が大きく伸びをしてついでに立派なあくびまで披露して立ち上がった。


こんな姿、チサが見たら喜ぶんだろうなぁ。


なんて思って見てると深瀬君と目があって、私に向かってニヤッとした笑顔を向けてきた。


そしてすぐ朝日君に向き直る。


「変な勉強ばっかしてないで、そういうとこちゃんと見てやれよ?光輝」


じゃあなと手を振って、三人がはしゃぎながら帰って行った。


何が変な勉強だよ、なんて言っているけれど...


な、

なんっ、

変な勉強って、


何ですか、っ、朝日君っ。


まさかの黒魔術か、もしかの妖術研究かと朝日君に視線を飛ばしたけれど、そういうのと真剣に向き合ってどうやって身につけようかと考えている朝日君を想像したら、それはそれでかっこいいななんて思ってしまった。


私は完全に、朝日君への気持ちに飲まれて頭がおかしくなってしまったのかもしれない。


それならそれでもいいかなと納得している私は、きっと誰もがかかる病気なのだろう。


こんな姿とこんな私は、何があっても知られてはいけないのだとかたく心に誓った。


朝日君に知られないよう、密かに両手を握りしめた。


「帰ろっか」


その時点で初めて手が頭から放れ、今度は目の前に大きな手が差し出された。


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