この恋をどうすればいいかわかりません。
あなたのことはよく知っています。
朝日君と仲がいいからってことだけではなく、深瀬君は仲のいい友達が好きな人だから。
顔と名前はしっかり一致している。
とはさすがに言えず、気の利いたことも思いつかないまま無言でやり過ごした。
「光輝の友達だもんなぁ、そりゃ知ってるか」
彼女なんだし...、取って付けたみたいな言葉が狙い澄ませて心を突く。
いいジャブだね、深瀬君。
ちょうどタイムリーに重くのしかかる悩みを突いてくるなんて、やるね、君は。
友達の好きな人が言葉巧みそうでなかなか手強い雰囲気だから心配になってしまう。
「で?まさかの出血?」
「いや、でっかいたんこぶだよ」
二人して後頭部を眺めて、頭上で会話する。
こんな風に男の(兄弟とその友達を除く若い)人に近付かれた経験がない私は、好きな人との急接近のドキドキと異性に近付かれたときの化学反応的なドキドキにダブルパンチを食らった。
「まじっ?マジのたんこぶっ!?この年になって?たんこぶ?すげぇな」
「なにが凄いんだよ、できるだろたんこぶくらい」
「そりゃ出来るよ?小学生ならごくごく当たり前に。ただ高校にもなってたんこぶとか珍しくね?」
「........」
そこで黙られると傷が広がります。朝日君。
「てことでちょっと触らして」
「ばかっ、止めろっ」
触ろうとした深瀬君の手が弾かれる乾いた音が頭上で響く。
「なになにぃ?俺の可愛い彼女に触るなってか?」
「何言ってんだよ。違うよ。触られたら普通に痛いだろうが。すっげぇでっかいたんこぶなんだぞ?」
うぅ...、
違うとかでっかいたんこぶとか、否定した上に色々重ねないでください朝日君。
思い知らされたみたいでへこみます。
ドキドキと浮つきと沈みのローテーションが激しくて気持ちが置いて行かれてしまい、自分のものなのに勝手にどっかへ行こうとするからしんどくてたまらない。
思わず胸元に手を当てて、小さく深呼吸した。
「お前は触ってるくせに。独占欲なら独占欲だと認めろよなー」
「だからそんなんじゃねぇって、めんどくせえ奴だな」
とか言いながらずっと頭を撫でてくれる朝日君はやっぱり優しい。
からかわれていい気分じゃないのに、怪我した人を放っておけないとか優しすぎる。
からかわれて嫌な思いさせてごめんなさいって、後でちゃんと謝ろう。
きっと今謝るとまたからかわれる事になりそうだから。
「あれっ、そんなとこでどうしたのー?」
「公共の場所で襲っちゃいけないんだぞーっ」
今は頭を撫でられる喜びに感謝して、たんこぶにもよくやったって誉めてあげようと思ったタイミングで今度は女の子の声が飛んできた。
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