進捗06:発表練習をしよう
華「よし、スライドの修正も終わったし、今日は発表練習をしようか」
和奈「発表練習ですか?」
華「ああ。当たり前だが、学会は発表時間は決められている。そして勿論、質疑応答もある。発表時間内に発表し、質疑応答の練習もしなければいけない」
和奈「な、なるほど」
華「あ、『発表者ツール』は使用禁止な。」
和奈「えっ!?」
悠里「えっ!?」
呉羽「えっ!?」
華「勿論だ。画面を見続けるような発表は不格好だし、ポインタでスクリーンを指しながら説明したほうが分かりやすいだろう!」
呉羽「……ってことは、喋る内容丸暗記ですか?」
華「いやいや、何言ってるんだ」
呉羽「ですよね~」
華「ああ。スライドを見ただけで無意識に言葉が出てくるまで、身体で覚えるんだよ!!」
呉羽「………………………………………………は?」
華「じゃ、まずは軽く台本を考えてみるか。最初は発表者ツールに文字を書き、読んでいいぞ」
和奈「最初は、ってことは、本番は……」
華「ミラーリング(※1)だ」
(※1)プロジェクターで映す画面とPCの画面を同じにすること
和奈「……マジか」
華「勿論、こっそりと発表者ツールに変更して発表した場合……単位で返ってくるからな?」
呉羽「……お、鬼だ……!」
華「あん?なんか言ったか?」
呉羽「いえ何も」
華「じゃ、台本を作成してくれ。私は教員室に戻っているから、質問があればいつでもどうぞ。」
そう言って先生は出ていく。
呉羽「…………」
和奈「……ていうか、質問も何も、何がダメなのかが分からないから、何を質問していいかがわからないんだよねぇ」
悠里「……ですね。」
呉羽「……余計なこと覚えられない……」
和奈「あはははは……」
呉羽「……あ、そうだ!カンペを作ってそれを読みながらすればいいのでは!?」
悠里「いや、ダメでしょ?」
呉羽「『発表者ツール』はダメと言われたけど、カンペはダメとは言われていない!」
悠里「詭弁ですね」
呉羽「昔の偉い人は言いました。『聞くな。怒られたら謝ればいい』、と。」
和奈「……確かに!!それいいかも!!」
呉羽「でしょ!!」
悠里「でも、ダメだった場合、単位がなくなるけど……」
和奈「よーし呉羽!真面目に暗記しようか!」
呉羽「裏切るの早くない!?」
和奈「……やー……単位は大切だしね~……」
呉羽「くっ……単位の犬め!!」
悠里「……じゃあ、呉羽はカンペ使う?」
呉羽「………………ごめんなさい」
悠里「よろしい。じゃあ、台本作ろうか」
呉羽「……はーい……」
………………………
………………
………
悠里「……っと、こんな感じですかね?」
悠里が一番最初に一息つく。
呉羽「……悠里……」
悠里「……はいはい、手伝ってあげる」
呉羽「――っ!!ゆうり~~~!!」
悠里「はいは……ってこら!抱きつかない!!」
悠里が呉羽の台本の手直しを始めた。
和奈「ん~~~~!!」
一通り私も出来上がったので伸びをする。
その時
華「お、大吉!出来上がったか!!」
和奈「げっ!?」
先生がやってきた。
華「『げっ』とは何だ、『げっ』とは?」
和奈「い、いえいえ~!なんでも無いですよ~」
華「そうかそうか。では、大吉。お前から発表してみろ」
和奈「なんでもないって言ったのに!?」
華「なんでも無いんだろ?だったら出来るじゃないか」
和奈「いや~……完成したとも言ってないですし……」
華「大丈夫だ。途中経過も兼ねて聞いてやる」
和奈「退路を断たれた!?」
華「じゃ、スクリーンに画面映せ」
和奈「……はーい……」
……発表中……
華「うむ、何も伝わってこなかった」
和奈「そんなわけ無いでしょう!?」
華「いいか、心を無にするんだ。何も知らない状態でこの発表を聞いたとき、本当に理解できるか考えろ」
和奈「じゃ、じゃあ、こんな発表方法はいかがでしょう?」
華「ん?」
……発表中……
華「アホか!!何でもかんでも説明すればいいという問題じゃない!!常識で考えて分かる言葉は説明しなくていいんだ!!」
和奈「は、はぁ……」
華「いいか?お前のお母さんに説明することを考えろ?」
和奈「……多分母親なら、ベイズ確率とかも説明しなきゃ分からないと思います……」
華「そういう例外はいい。学会会場にいる人はそのくらいわかる。」
和奈「えー!?」
華「じゃ、作り直しておいてくれ」
そう言って先生は出ていく。
和奈「…………悠里?」
悠里「ムリムリムリムリ!!」
和奈「な、なんで!?」
悠里「や、私のも絶対修正出る!!今の聞いててそう思った!!」
和奈「うぅ……これ、どうしたら良いの……」
悠里「……答えが……なさすぎる…………」
その後、全員の発表練習をし、全員がボロッカスに言われたのは言わずもがなであった。
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