進捗02:それぞれの研究ミーティング
研究ミーティングは教員用の部屋で、先生と学生の1対1で行われる。
◆
華「ふむ……洋服のレコメンド、か」
和奈「はい!私、ファッションが趣味なんで」
華「テーマ的には面白そう……だな。ではどのようにレコメンドしていくかを考えようではないか」
和奈「え?洋服の中から合う、合わないを答えていくんじゃ……?」
華「……あのな、端から合う合わないが分かっていたら、そもそもに『レコメンド』なんてあまり使わないだろ?」
和奈「な、なるほど……」
華「そもそもに、合う合わないの二択のアンケート……A/Bテスト、というのだが、服には膨大な種類があるのに、そんな二択のアンケートを答えきれるわけがない」
和奈「……うぐっ……」
華「というわけで、まずはデータを作るところからだな。服の種類を事細かく分けた表を作ろうか。」
和奈「……事細かく?」
華「例えば、半袖、タートルネック、ボーダー……そんな感じだ。で、どの組み合わせが流行っているのかなどが分かるだろ?」
和奈「なるほど」
華「そして、それらから身につけている組み合わせの統計を取ろう。ただし、確率の前提である『同様に確からしい』は成り立たないので、普通の確率ではなく、ベイズ確率を使っていこう」
和奈「……え?ええ?」
華「で、大吉」
和奈「は、はい!」
華「大学院に進学する気はあるか?」
和奈「え?!えっと……今のところ無いですけど……」
華「大学院はいいぞ!」
和奈「……え?」
華「とりあえず修士を出よう。初任給も高くなる事がある!キミの人生においての、ターニングポイントにもなりうるぞ!」
和奈「大学院が、ですか?」
華「ああ。こんな研究が、たった1年ちょいで出来るわけがない。研究の面白さを真に理解するには時間が必要だ!修士で2年……そのプラス2年がかなり大きい!何より、今までよりさらに考え方が身につく!!考え方、つまり、学び方。そう『学力』だ!人生におけるたった2年でさらなる成長が期待できるというわけだ!!どうだ?」
和奈「え~っと……」
華「分かる、金銭面だろ?それは大丈夫だ!院試の成績優秀者は、授業料が60%カットされる!試験は君たちの実力だが、面接……研究発表の時間もあるのだが、安心したまえ!キミたちはこれから学会に出るんだ!!そこでたくさん練習できる!私も練習に付き合うぞ!これで大丈夫だ!」
和奈「いや、あの……」
華「それとも、就活が心配か?大丈夫だ!この業界は今、人が足りていない!ブラックもホワイトもな!!だからこそ、大学院の生徒を取りたがる!!どうだ?」
和奈「ん~っと……」
華「なんだ?今の単位が心配なのか?どうだ先生に話してみろ――」
(以下、省略)
◆
華「商品の推薦?」
悠里「はい。例えば、大手ECサイト(※1)である、
(※1)Electronic Commerce:ショッピングサイトみたいな感じ
華「ほう?」
悠里「例えば、マウスやキーボードを購入すると、別のマウスやキーボードをレコメンドされます。しかし、マウスはそう簡単には壊れません。買ったばかりなのに推薦されても、
(※2)消費者がその商品を買いたいと思うキモチ
華「ふむ」
悠里「だったら、例えばマウスを購入したらキーボドを、スマフォを買ったら充電器を推薦するべきだと思います」
華「よし、ならばクラスタリング(※3)の手法を作ろうではないか」
(※3)分類の枠組みを作る的な意味
悠里「つまりどういうことでしょう?」
華「分類されている物……例えば、マウスはマウスと分類されているし、キーボードはキーボードと分類されているよな?」
悠里「はい」
華「それを『PCの周辺機器』のような枠組みに変えてレコメンドしよう、という話だ」
悠里「なるほど、それならばマウスを買えば、マウス以外の物がレコメンド出来ますね」
華「ああ。そういった『思いがけない出会い』を作ることを、
悠里「わかりました」
華「では、そのために案を出してきてくれ」
悠里「はい!」
華「ところで、話は変わるが徳島」
悠里「なんでしょうか?」
華「大学院に進学する気はあるか?」
悠里「え、えーっと……あまり考えてなかったのですが」
華「大学院はいいぞ!」
(以下略)
◆
華「……で、テーマは決まらなかった、と」
呉羽「……はい」
華「何でなんだ?」
呉羽「プログラミングがしたいからです」
華「いや、よくわかんないけど……趣味とか無いの?」
呉羽「プログラミングです」
華「……いや、まあ……うん、そうかも知れないけど……なんか他に?」
呉羽「ご飯食べるの好きです」
華「メシ……メシなぁ……じゃあ、レシピでも推薦してみるか?」
呉羽「レシピ推薦しても、ご飯食べられないですよね?」
華「まあ、アレだ。注文するときとかに悩んだら、料理名で推薦とかでも出来るだろ。そんな感じのやつ」
呉羽「なるほど。確かにそれは良いかもしれません」
華「よし、ではレシピの特徴を抽出していこう。」
呉羽「特徴……?」
華「まずは、レシピサイトのスクレイピング(※4)からだな。特にレシピのタイトルには注意しろ?『こってり』とか『子どもに人気』なんてワードは、そのレシピの特徴を表しているのだから、それらを使わない手はない!」
(※4)Webサイトから情報を抽出すること
呉羽「なるほど」
華「それらの、特徴が現れているレシピを教師データとして、他の特徴が書かれていないレシピとの類似度を測る。類似度が高ければ、そのレシピは、教師の特徴を引き継、という手法だ。」
呉羽「…………?」
華「具体的には、おそらくコサイン類似度を使うのがメジャーではないだろうか。形態素解析器(※5)には……MeCab(※6)なんか使えばいいと思うぞ!」
(※5)形態素解析を行うツール
(※6)C++で書かれている日本語形態素解析システム(実在します)
呉羽「…………??」
華「で、教師データの名詞、動詞なんかを特徴ベクトルの次元にして、特徴不確定レシピから抽出した名詞、動詞を次元と比較し、次元に存在すれば1、存在しなければ0とした、二値の特徴ベクトルを作成だ。」
呉羽「……??……???…………????」
華「で、高岸」
呉羽「……は、はい?」
華「大学院に進学する気はあるか?」
呉羽「…………や、何も考えてないですが……」
華「大学院はいいぞ!」
(以下略)
………………………
………………
………
和奈「……思い返すと……大学院の話が一番記憶に残ってるんだけど……気の所為?」
悠里「……まごうこと無く私も」
呉羽「……右に同じ……」
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