吹き抜ける。
バカしかおらんのか...。
一生懸命名前を覚えても、もしかしたらバカ1バカ2と番号で呼ぶかもしれない気さえしてくる。
「よしっ、今日は記念に俺も試合混ざるぞっ!!行くぞおらぁっ!」
アップもなしにコートに入り、早速チーム分けじゃんけんが行われている。
え、
なんの記念?
ねぇ、
なんの記念なん??
一人くらいまともな人がいて止めてくれてもいいのに、全員の自己紹介が済んだ今その線は捨て去らなければならない。
このチームの女子マネージャーとしての今後が、いや、一時間後でさえ不安でしかたがない一。
けれど、いざ試合が始まってみると強豪と頷けるほどの腕前だった。
女子マネージャーだなんだ騒いでいた彼らはどこへやら、ボールを相手コートへ落とすのみだけを考えてありとあらゆる攻撃を繰り返して敵を翻弄している。
チームメイトばかりなのに、手の内を知っているはずがスパイカーもセッターも見事に出し抜いていた。
その逆もまた然りで、ブロッカーがスパイカーを誘導するような精密なブロックも数多く見られる。
攻撃力も去ることながら、防御も素晴らしくリベロが素早く無駄の無い動きでボールの落下地点に回り、ボールの勢いを殺して確実にセッターへ返していた。
「すごいやん」
ヘラヘラちゃらちゃらしているだけではない、彼らの違った一面に鳥肌が立つほどだった。
「はじめちゃーんっ!どぅっ??かっこいーっしょ?」
スパイクを決めたオボジットポジションの.....名前分かんない先輩がこっちに向かってガンガン手を振ってくる。
「バカっ!ちゃんと前見ろ礼二!!」
まだ試合中なのによそ見をして叱られ、おまけにしりまで蹴っ飛ばされていたがそれもそのはず、相手の強烈なサーブが礼二なる人目掛けて飛んできたのだ。
あ、
こりゃ捌けん。
と、一が思うと同時にレシーブ体制の遅れた礼二の腕に強烈なサーブが炸裂した。
予想に漏れず、腕に弾かれたボールが勢いそのまま一の場所まで飛んできた。
「一ちゃんっ!!」
「危ない!避けてっ!!」
「いやぁぁぁぁっ!!」
一斉に声がして、最後は阿鼻叫喚さながらの悲鳴まで上がったが一本人はいたって冷静にボールを見据え、腰を落として迎え撃つ。
そして、飛んでくる勢いを完全に殺したレシーブでボールを真上に上げた。
落下してくるボールをキャッチすると、唖然と呆けた顔の部員目掛けて投げ返す。
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