吹き抜ける。
まさかこんな形でなんて思ってなかったので、その一斉に思わず体をびくつかせてしまった。
「おおっ、女子だっっ!おい女子だぞ!」
「女子だっ!女子マネだっ!!」
「来たぞっ!女子っ!!」
何度も何度も女子を連呼して、練習を中断させた男子バレー部が駆け足で集まってきた。
お前ら女子見たことないんか...。
そんな突っ込みを入れたくなる反応と、噂通りのチャラい予感に上がっていた一のテンションが怪しく下がり始めた。
しかしなるほど、マネ候補引く手あまたというのも頷ける男前と細マッチョ揃い。
「に、二年の、お、及川一です。よろしく、お願いします」
勢揃いした部員を前に、おずおずと頭を下げる。
いやに反応が薄く、何かやらかしてしまったのかと気になった一が頭を上げると、なぜか全員目を見開いて一を見ていた。
え、
こわいっ!
と後退りすると、女子バレー部キャプテンに腕を捕まれて前へ放り出された。
えっ、
こわいっ!!
選択ミス、逃げたい。早く逃げたい。
その思いで一杯になってしまった一かひきつった顔で後の反応を待った。
が、
「............」
「.................」
「..................」
え、何この雰囲気。
自己紹介からたっぷり時間がかかっているはずなのに、こっちを凝視したまま未だ誰の口から何も言葉が出てこない。
まさか、こんな不細工じゃテンションあがんねぇよ何考えてんだよ即退部だ退部ざけんじゃねぇ....ということか...。
入部初日で退部という不名誉が刻まれるこの記念すべき状況に、一が青ざめた顔で体を固まらせた。
すると、一番真ん中にいた一番背の高い男前がゆっくり息を吐き出した。
「関西弁だ...
声をかけられた猛と呼ばれた部員も、一を見つめたまま息を吸い込む。
「あぁ、関西弁だ....
右手、左手でそれぞれがガッツポーズをし、何かに感じ入るようにうんうん頷いている。
すると次々、持っていたボールを放り投げて跳び跳ね始めた。
ボールが跳ね、部員も飛び上がる。
「関西弁来たっ」
「可愛いの、来たっ!」
「関西弁喋る可愛い女子、来たーーっ!!」
「貴重な関西弁可愛い系マネ、俺ら超ラッキーっ!テンション上がってきたぁぁぁっ!」
円陣まで組み、「ファイっ、オー!!」と試合前さながらの掛け声をあげている。
バカなんか、こいつら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます