第62話「プライドが高くても行動が伴ってなければ子供だと思う」
「《波動》と《幻影》!?どんな能力なんだ?」
「詳しくは知らん。じゃがエスティナ嬢が言うとったように小僧の友人も異能持ちということじゃ」
エイプは森に生息する猿人類らしい。
猿人類と言っても人とは関係がなく、二足歩行の知恵の回る猿型の魔物とのことだ。
一番厄介なのは魔法が効きにくいということだ。
どうもモリアナは魔法至上主義らしく、剣士の数が極端に少ないらしい。
そのためエイプが出たというだけで大きな騒ぎとなっていた訳である。
その中でもキミヒサとアスナは有能な剣士として在席している貴重な存在であるらしい。
その話で出てきたキミヒサとアスナの二つ名に俺は興味を惹かれていたわけだ。
「旦那〜俺もう無理かも・・・・・」
するとルーイが限界だと言わんばかりに俺の横でヘタっていた。
テオの話を聞くために今回俺は荷馬車に乗っているのだが、ガンドーベル用に
一言でも喋ろうものなら朝食がリバースしてしまいそうなのだろう。
時たま白目を向いている・・・・・
確言う俺も吐くまでには至らないものの、少し気分が良くない。
現状の把握を盾に騙し騙しと言った所だ。
テオは眉間の皺を深くさせつつも酔うまでには至っていない。
テオ曰く、「もっと酷い乗り物が他にある」とのことだ。
人生経験の賜物だな。
ナタリーはと言うと、いつもの俺の
どう言う理由であれ、酔わないのは羨ましい限りである。
そして現在リバース真っ最中がもう一人。
「奴に聞いた方が話が早いじゃろうが。」
「いや、あれは無理だろ。なんで付いてきたんだか・・・・」
「うぷっ・・・・・だんでごんだどりぼどにのどぅんだ・・・・オロロロラロロロロラロ・・・・・はぁはぁ・・・・」
何でこんな乗り物に乗るのかって?
速いからに決まってるからだろう。
彼女は盛大に吐瀉った後、多少スッキリしたのか何事も無かったかのように澄まし顔で座り直していた。
彼女の名はローラ・ベル・キャリー。
《ワンド》モリアナ支部、四番隊隊長にしてモリアナ魔法大学の教授である。
綺麗なブロントの髪を上にまとめたヘアースタイルに取ってつけたような真新しい装備を纏っている。
初めて会った時、俺はハリウッド映画に出てくる美人秘書のような印象を受けた。
まぁ要するに『ちょっとキツそう』なタイプである。
今回の“豪華な”宿を用意してくれた人物だ。
テオが王城に行った際に遭遇したことによって付いてくると言い始めたのだそうだ。
「・・・・・・はしたない所をお見せしましたわ。なにせこんな野蛮な乗り心地の馬車に乗るのは初めてなものですので。それで、何の話ですの?」
「小僧がの《波動》と《幻影》について知りたいそうじゃ」
「アキラさんのお友達の話、私も聞きたいです!」
アリアスも興味があるのか、まだ青い顔をしているにも関わらず意欲を見せていた。
「あら、歴戦の英雄である《聖女様》と《八詩のテオ》様ともあろう事が知らないことがあるのですね。分かりました。この
そりゃ知らんだろ・・・・
ローラがはち切れんばかりの巨大な胸を張り、酔って吐いていた先程までとは打って変わってムカつくほどのドヤ顔をかましてきた。
眼鏡をかけていれば語尾に『ザマス』がついてそうだ。
当のテオはと言うと欠伸をしながら明後日の方に顔を向けていた。
確かに面倒くさいな。
「まず《幻影嬢アスナ》様ですが《幻影》とは名のごとく幻を見せることが出来る異能です。」
「幻?闇魔法とは違うのですか?」
確かにアリアスの疑問の通りだ。
アリアスの得意としている光魔法は回復、補助、強化などの効果がある。
その反対に位置しているのが闇魔法である。
闇魔法は状態異常などの効果を与える魔法であるため、相手に幻覚を見せることも出来る訳だ。
「違うわ。闇魔法とは似て非なるモノよ!対象が存在しないのよ。その場にいる全員に幻を見せることが出来るの。もちろん遠目で見ている人にもね。」
「そ、そんなに凄いんですか!!?とてもお強いじゃないですか!」
「そうね。でも本人は弱点があるって言っていたわ。まぁ私も彼女の幻影を破れる人を見た事がないから弱点とまでは言わないんじゃないかしら。」
「もしそれが事実じゃとしたら、戦闘となれば敵も味方も《幻影嬢》を捉えることが出来んと言うわけじゃな・・・・・」
アスナの異能は強すぎやしないか?
どんなチートだよ・・・・
コウの異能も大概だが、こうなるとキミヒサもチートばりの異能を持っていそうだな・・・・・
「では《波動》はどんな能力なんだ?」
「《波動》は・・・・・・・・」
ローラは今通って来た道を遠い目で見つめてーーーー。
「詳しくはわからないわ・・・・」
なんだそりゃ!
あんだけ上から目線で教えると宣っておいて知らんはないだろ。
「見たことくらいはあるんだろ?」
「ありますわ・・・・でもよく分かりませんの。対峙した弱い魔物が急に爆ぜたり、そうかと思えば別の魔物には『こいつは触れないと無理だ』と、何とも要領を得ませんの。少なくとも《波動騎士》は《波動》を相手に与えている事は、訓練で打ち合った四番隊の魔法使いの証言で掴めていますわ。」
確かに分かりにくいが特定の条件が必要だと言う事は分かった。
その特定の条件に合致しない敵と対峙しなければならなくなった場合、キミヒサの異能は弱体、または意味をなさなくなってしまう訳だ。
もしエイプがその対象であるならキミヒサは苦戦を強いられることになるだろう。
まぁもう一人のチートであるアスナがいるわけだから、そこまでの心配はいらないだろうが用心に越したことはない。
それにアスナの言う弱点も気になるところだ。
会ったときに詳しく効果を聞いておこう。
もしかすれば打開できる何かを提示できるかもしれないしな。
二人とは一緒に無事に元の世界に帰らないといけない・・・・・
俺の出来ることなんて微々たるものかもしれないが、出来るだけのことはしておきたいしな。
キミヒサとアスナの能力の考査をしているとガンドーベルの方からコウの声が聞こえてきた。
どうやら目的地が見えて来たらしい。
「兄ちゃん!早く来て!!あれってどういう状況!!?」
コウの言葉に疑問を懐きつつ揺れる荷馬車を歩いて前に出ると、行く道の先には赤い荒野が広がっていた。
そして、そこに見えたのは・・・・・・
「ウゴォォォォォォォオオオオオ!!!!」
「なんだ・・・あの馬鹿でかい猿は・・・・・」
血の様な赤く染まった荒野でオークキングよりも大きな3体の猿が地響きを立てるほどのドラミングをかましていた。
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