第51話「類は友を呼ぶのなら会社は似たような奴だけが残るのかもね」
「ハーフリザードマン?リザードってことは爬虫類系か?」
頭の中にトカゲのザラザラの皮膚をし、頬のない裂けた口、瞬膜でウインクするの人間を想像してしまった・・・・
確かに人間の美的感覚では美しいとは言い辛いな・・・・
当の本人は何故か決めポーズらしき石の仮面と関係のありそうなポーズを繰り返している。
「爬虫類?分かりませんが、皮膚は鱗で覆われてしまって口が裂けてしまいます・・・・」
ビンゴだな!
だが待てよ・・・・・
「リザードマンはその・・・・卵なのか?というかそもそも交配が可能だとは思えないのだが・・・・」
「隊長は父親がリザードマンで母親が人間です。リザードマン自体が元々、太古の祖龍アルテミーラが戯れで人と交わった種だと言われています!元々人とドラゴンの間の存在なので、その・・・交配は可能かと・・・・」
「兄ちゃん!!ドラゴンだって!!ちょーファンタジー!!じゃあザイネルは強いの?」
「はい!隊長格の中でも一際です!ドラゴンスキンなど魔人の攻撃を受けても平気な能力を持たれています!・・・・ですが、あれですので・・・・」
「あー・・・・・」
ということはドラゴンのクオーターと言うわけか。
顔は別として、素晴らしい研究材料だな。
まぁ実際は何世代とリザードマン同士で交配を続けてきた訳だからクオーターとは言い難いがドラゴンの遺伝子を持っていると・・・・
「だが、それで仲間の危機に向かわないと言うのはどうなんだ?」
「隊長がリザードマンになってしまうと魔法も使えなくなって、逆に弱くなってしまうんです・・・・・」
「いや!僕が醜くなるからに決まっているだろ!」
使えんイケメンだな。
だが、人間状態であればドラゴンの力も使えるのか・・・・
だからこそ彼処に立っているのだろう。
で、月に何日間かリザードマンになってしまうと・・・・いい薬だな。いや効果がないから薬でもないか。さしずめイケメンへの罰と言ったところか。
「ぬぁーーー!!!いつまで待たせるんじゃーー!」
部屋の雰囲気に似つかわしくない幼女のような声の先に目を向けると、椅子の横の扉が大きな音をたてて開かれ、声の主であろう金髪のショートヘアの幼女が飛び出してきたかと思うと、ザイネルが決めポーズのままドロップキックされて横に吹っ飛んでいった。
「ぶほっ!!」
その後から何事もなかったかのように、ゆっくりとした歩みでシェーバスが出てきた。
ん?まさか・・・?
「エスティナ様、せっかくご用意したのですから合わせて頂かないと・・・・・」
「王族でもあるまいし、こんな物々しいのは性に合わん!元々冒険者じゃぞ!そもそもザイネルの話が長いのが悪いんじゃ!大事な時に動けん奴の話なんぞ聞かんで良いぞ!」
シェーバスは目頭を押さえてお手上げのポーズだ。
「はっはっはっは!!よくぞ参ってくれた!!私がエスティナ!時の魔女エスティナ・マーリンタワーじゃ!異界の戦士よ!!・・・・?・・・・思ったより少し弱いの・・・・じゃが安心せよ、私の強力な加護もかけておる!大丈夫であろう!問題さえ解決すれば帰してやるでな!それまで死にものぐるいで働いてくれ!」
「エスティナ様!!?」
幼女は金糸の装飾が豪華に施された紺色のローブをはためかせて椅子に立ってこちらを見ていた。
ローブの丈が長く『ちんちくりん』という言葉が相応しい。
うん、中々ややこしい奴らの集まりだと言う事がわかった。
「兄ちゃん、帰ろっかー」
「どこにだよ。」
兎に角、今は帰る算段もない。公久と明日菜の為にもここは従う他ないだろう。
だが奴隷のように扱き使われるつもりもない。
「おい、時の幼女エスティナ。まずは謝罪だろ。そちら側の都合で呼び出され、働かされるんだ。謝罪からが筋だろ。」
「アキラさん!?」
「よ、幼女じゃと!?」
「ップ!」
ハルズマンが堪えきれずに吹き出してしまっていた。
この幼女の実年齢は何歳なんだ?
エスティナと俺のやり取りにアリアスがアワアワと慌てているのを尻目に俺は言葉を続ける。
「それに呼び出されたのは俺とコウだけじゃない。他の奴らの保護もしてもらわないとコウも動きたくないと言っている」
「言ったっけ?まー公久と明日菜の無事が一番だけどねー」
「お前がアキラとかいうコウの双聖か・・・・確かに謝罪からであったな。すまなかった。異界の戦士よ、こちらの都合で悪いが、力を貸してくれ!残りの二人に関しては既に場所はつかめておる。迎えを行かせたのじゃが、こちらの世界の者を信用しておらぬようじゃ。後日迎えに行ってやれ!」
「無事なのかー!良かったね兄ちゃん!!」
「アキラさん!良かったですね!」
「ああ、良かった。」
まずは一安心と言ったところか・・・・
「どうだ!寛容であろう!はっはっはっはっは!!」
エスティナは無い胸をこれでもかと天井に向けて笑っていたが、ふと真顔に戻ると俺を睨みつけた。
その瞳は140センチほどの身長からは考えられないほど強く、身体が一瞬震えてしまった。
「それで・・・・アキラとやら、お主は何故この世界におるのじゃ?そもそも召喚したのを認識できたのは3人じゃ。お主は呼んでおらんぞ。」
待て待て待て待て。
どういうことだ?
事態が掴めんぞ・・・・
「どうもこうもお前が召喚したからに決まっているだろ。」
「しておらん!いや、わからんの・・・じゃが4人も召喚する魔力なんぞ保有しておらぬわ。・・・・・まぁ良いかの!コウの双聖とあれば敵ではあるまい!それにお主、中々に奇っ怪な魔法を使うそうではないか。お主も面倒を見てやるかの!」
幼女はまた高らかに笑い声をあげると、飽きたのか真顔に戻り椅子に座ってしまった。
まだ俺の疑問が解決していないぞ。
「お前が認識していない、召喚していないということは、俺は誰に召喚されたんだ?」
エスティナは飽きたかのように気怠げに頬杖をつくと「知らん」と一蹴し話を続けた。
「そんなことはもうどうでも良い。お前が敵ではないのなら何ら問題のないことじゃ。それよりも本題といこうではないか。」
・・・・どうでもいいか・・・・確かに召喚されたことに変わりはない。帰るための算段を立てないといけないのは変えようのない目下の課題である。
本人が知らないと言うなら余計に掘り下げても意味がないな。
「そうだな。ではよろしく頼む。」
俺は納得すると、この旅の本題に耳を傾けることにした。
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