第50話「イカついメンズもイカれてるメンズもイカメン」

「主!この扉スゲーデカイにゃ!!それにこの装飾!開閉の魔法陣もあるし、ベラデイルの城よりスゲー!!」


ルーイが興奮して俺のベストの裾を引っ張っている。


「まぁエリオットは無駄なところにお金を掛けそうにないだろうからな。」


俺たちはシェーバスに促され食堂をでると、屋敷の奥の大きな扉の前に案内されていた。

既にハルズマン達は先に食堂から出ており、ここにいるのは俺達5人とシェーバスだけだ。


「『異界の戦士』様、こちらです。」


シェーバスが扉の一部に手を当てると重そうな音を立てて目の前の様々な装飾が施された扉がゆっくりと開かれた。


土魔法の応用か?中の金属に効果を与えて動かしているのだろうか。


コウを先頭にアリアス、ナタリー、俺、俺の服のすそを握ったままのルーイの順で部屋へと足を踏み入れた。


恐らく屋敷の構造上、一回は食堂と炊事場や使用人の部屋などがあるのだろうか。

屋敷の延床の半分はあるんではなかろうか。

長い赤絨毯が部屋の奥に続き、その奥に豪華な銀の装飾が施された椅子がみえる。


まだ座っていないか・・・・


赤絨毯の左右には先に食堂から出ていたハルズマンたち《ワンド》が一列に規則正しく並んでおり、その光景はさながら王への謁見かのように思える。


「うわー!広いね〜!これなら雨の日でも稽古が出来そうだね!」


「そうですね!この広さなら本気で走っても・・・・って、コウ様、流石にここは・・・・」


コウの空気を読まない発言にナタリーがノリツッコミを入れていた。

そのやり取りを見ていた《ワンド》の数名が肩をプルプルと揺らしている。


どことなくシェーバスの醸し出す雰囲気が怖い・・・・


そんな会話をしていると玉座まで5メートル程の位置でシェーバスに止められてしまった。


「では、ここでお待ちください。エスティナ様を直ぐにお呼び致します。」


そう言うとシェーバスは玉座の横の扉へと入ってしまった。


「大層な身分のようだな《エスティナ様》とやらは。」


「はい!エスティナ様は魔王を倒されたパーティー《風の行く末》の6人の内の御一人なんですよ!」


「おおー!兄ちゃん!エスティナ様ってスゲー人なんだな!」


ほほう。だからこそ、ここまで優遇されているわけか。

大戦で最後まで戦ったと言われるこの国ならまだしも、他の国は煙たがらないのか?

残りの5人・・・・・まてよ、4人か・・・・


ん?どういう事だ?・・・・コウが召喚された理由は魔王を倒した勇者を倒すことじゃなかったか?

なら《時の魔女エスティナ》は勇者の仲間・・・・?


「お待たせいたしました。エスティナ様が入られます。」


「うわっ!」


急に声変わりしていない少年の声が聞こえたかと思うと、シェーバスが既に俺達の前で深々と頭を下げていた。


考え込んでいたとは言え、こいつ実は相当強いのではなかろうか・・・・


シェーバスが片手を上げると玉座横の扉から見慣れぬ美男子が先に出てきて玉座の真横に立った。

耳にかかるほどで切り揃えられた銀髪に、適度に白い肌。切れ長の翠目に銀色の長い睫毛が印象的だ。髪色に合わせたような銀色のフルプレートの鎧には胸に《小杖|ワンド》の装飾が施されている。

年齢はナタリーと同じくらいであろうか?

コウがスポーツ系イケメンならこいつは少女漫画系イケメンだな。


「この度はお呼び出しして誠に申し訳ない。私が《ワンド》三番隊隊長ザイネル・クロフォードだ。オークキングの件、報告は聞かせてもらいました。コウ様、《ワンド》の危ない所をありがとうございます。では・・・・」


「待ってくれ、ひとつ聞いてもいいか?」


俺は魔女の件とは別で気になっていたことを聞くことにした。


「何でしょう。えーっと・・・・」


「隊長、アキラさんです!」


「ゴホン!何でしょうアキラさん。」


あー何か昔から名前を忘れられるのはよくある事だが、コウの名前はサラッと出てきたくせに俺の名前は覚えていないとか・・・・イケメンにされると余計イラッとしてしまうな。


「何でお前は仲間、いや引いてはミッドエルスが危ないのに出てこなかったんだ?」


その途端、一瞬空気が凍りついたような感覚に苛まれた。

周りがそうさせたのか、それともザイネルの殺気か何かなのだろうか・・・・

ザイネルは軽く微笑んだままの表情を崩してはいない。

ただアリアスとナタリーがバツが悪そうに俯いてしまった。


まぁいい。

どちらにしても、これから関わるかもしれない《ワンド》の内情を知るためには聞いておきたいことだ。

特に指揮をする隊長ともなれば重要案件だ。


「アリアスさん、ナタリーさん。話してはないようなので一応感謝の言葉を述べておきます。ありがとう。」


「は、はい!ありがとうございます・・・・・」


なんだ?嫌味か?

アリアスの目が泳いでいるじゃないか!


「アキラさん?でしたかね?貴方は僕がどう見えていますか?」


「嫌味な銀髪イケメン野郎だ。」


「イケメン?」


「顔が整っているってことだよー」


「コウ様、ありがとうございます。イケメン・・・いい言葉ですね。まぁ嫌味と言う部分は置いといて・・・・・私はそう、イケメンなのです!!」


どどどどどどどうした!!??

何が起こったんだ!?

今の一瞬で精神に異常でもきたしたのか!?


「ですが、この強くてイケメンで優しい完璧な僕でも月に数日の間、完璧では無くなってしまうのです!!それを僕に恋い焦がれる女性が見たらどう思います?幻滅しますよね?膝をついて泣き叫びますよね?そんな世の中のザイネルファンを悲しませたくない・・・・そうなんです!その数日が丁度、今回の件と重なってしまったんです。」


ザイネルは何故か涎を垂らしながら熱弁を奮っていた。


「兄ちゃん、この人多分、頭おかしいよ・・・・」


「主、やべーってアレは・・・・」


ナタリーは頭を抱えてしまって、先程から「すまない」とつぶやき続けている。


あーこれは何時ものことと言うことか・・・・・


「アリアス・・・・こいつの言っている意味が解らんのだが・・・・」


「隊長はハーフリザードマンなんです・・・・」

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