零零零弍•ラブレター






『前略



好きな相手

恋をした相手

愛した相手

結婚した相手

子供を授かった相手

共に年をとった相手

死を看取った相手

死んでもなお、想う相手

死ぬときに顔が浮かぶ相手


そんな相手がいる。

僕は、その人が大切であり、失いたくない相手だ。

唯一の存在がいるとしたら、それは彼女だろう。


そう思える相手は何人もいたけれど、その度に最上級の愛を感じていた。


そんな最上級の愛を感じる度に、その先の感情が見え隠れしてしまう。


僕は、愛する人を自分の手で殺したくなってしまう。


殺意が沸く


もう、本当に好きで、可愛くて、愛おしくて、どうしようもなく自分だけの人にしたくなる。

そうなると、その人の余すとこなく全て欲しくなる。


笑った顔も、怒った顔も、悲しんで泣いている顔も、寝ている顔も、苦しんでいる顔も、死にそうな顔も、死んだ顔も



何でこんな事を書いているかというと、誰かに知って欲しいからとかじゃない。知られたところで、頭がおかしいとか思われてしまうし、友達だったら嫌われてしまうかもしれないし。


この感情には、誰も共感できないからここに書いている。


人と話すと、その人がどんな人か大体分かる。分かると思う。


先日友達に、僕は分かっているつもりになっている、と言われた。多分、僕が感じた相手の人となりが当たっていたからそんな事を言うのだ。言うんだと思う。


こんな事を思ってしまうのは直したほうがいい所だと知っているけれど、そう感じてしまうのだから、相手も何処か僕にそう感じさせているのだ。


そう思う。



他人や友達と会話していて、毎回感じてしまうことがある。


音楽の趣味とか、好きなお笑い芸人とか、好きなゲームとか、そういう所が一緒の人は多い。だけど、恋愛観に関してだけは、一緒だなと感じた事がない。


多分、この先一生そんな人は現れない。そう思う。



僕は、友達を恋愛対象に見る事ができない。


これは、恐らく恋愛対象に見たくないのだと思う。


もし、友達の事を好きになってしまったら、どうしてもその人との間に温度差を感じてしまうだろう。


そんな事に僕は耐える事ができない。


全部ぶっ壊したくなるし、無かったことにしたくなるし、地球上の人間を全て滅ぼしたくなるし、その人を食べたくなる。


だから、もしその人が僕の隣にいて背中合わせで寝ることになっても、背中がくっついていても、相手がその距離を離すことがなくても、僕は冷静でいれる。


だけれど、冷静な頭をしていようが、冷静に考えて抱きしめたくなったらもうだめだ。


キスしたくなったらだめ、愛したくなったらだめ、傷つけたくなったらだめ、殺したくなったらだめなのだ。


「僕が死のうと思ったのは」という歌がある。


この歌は、「僕」が死にたくなってしまった様々な理由と、その瞬間の自分の心が歌われている。


僕が死のうと思ったのは、あの人に触れてしまったからだ。


触れた瞬間に、死にたくなってしまった。


長く太い針で、心臓を貫きたくなった。


痛みを伴って身体が冷たくなっていくのを感じてみたくなった。


床に広がる朱色の綺麗な自分を見てもらいたかった。


そうすれば


君は僕に


僕は君に


僕等は一つに


一緒になれたんだ




不一 人間 』



「こんな恋文なんて貰っても、意味ないわ。」


心がないもの。と呟いて、大事そうに頭の中にしまい込んだ。


立ち去る赤いドレスの後ろ姿は、なんとなく嬉しそうだった。




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