第12話
「な、ななな何でこちらに殿下が⁉︎」
訓練場内の場にいた全員が、目の前に現れた少年に驚愕し直ちに跪き
「何でと言われても、神託の儀を執り行う国民の視察にきたんだよ。まあ、父上や宰相らには内緒で抜け出してきたから、首を突っ込むつもりはなかったんだがな。でも、決闘と聞いたからには、こんな面白そうなこと……ゴホッ…王子として国法に背いていることを放って置けないだろ?貴様が皆を恐喝して口止めしていたしな。」
「そ、それは………。」
グラエス公爵は顔面蒼白になりながら脂汗をかいている
「それに、負けたにも関わらず打ち首だと?私の聞き間違いだよな?」
跪いているグラエス公爵の前に立ちながら青年は問い質す
「いえ、そのようなことは一切ございません‼︎冗談と言いましょうか?勿論、負けたからには神に誓って約束を守りましょうぞ!」
グラエス公爵の態度は急転し、地面に額を擦りながら声を絞り出した
「だよな?…まあもし打ち首にしようものならお前が私に火魔法を放ったという事実を突きつけるだけだがな。」
「そ、そ、そうですとも‼︎冗談に決まっておるではないですか‼︎殿下もお人が悪いですな。………ハハハ。」
微笑を浮かべながら話す殿下に対し、顔を上げて乾いた笑みを浮かべながらグラエス公爵は青白い様相で対応する
「…というわけだ。お前達、その者共を直ちに解放しろ。」
殿下は、レオナールや両親を束縛していた公爵家の私兵に命令を下す。
「「「「「「ハッ‼︎」」」」」」
レオナールは即座に解放され、両親に倣って殿下の膝元に跪き頭を垂れる
「アリウス殿下…この度は、殿下の御配慮に誠に感謝致します。殿下の御蔭で私の家族を守ることができました。」
頭を垂れながら殿下にジークは感謝の意を表明する
殿下の名前アリウスというのか…イグニス達を暴れさせずに済んだし本当に助かったな。
『ちぇ、心置きなく暴れれると思ったのに…。』
『残念なのね〜。』
……本当に良かった。殿下本当にありがとうございました‼︎お陰様で当たり一帯が焼野原や地割れになる事なくすみました‼︎
レオナールは、声には出さず内心更に感謝を伝える
そういや、殿下のステータスどんなだろ?ちょっと見てみるか…。
顔を少し上げて、ちらっと殿下の顔を覗き込む。
すると、殿下はニヤっと口角を上げてレオナールを見ていた
「レオナールといったか?少し話があるのだが良いか?」
「…へ?」
間の抜けた様な返事をしてしまったが、それを聞いたアリウスは噴き出す様に笑った
「…ふっ、そんなに驚かなくていいだろ。ちょっと興味を持っただけだ。…そうだな、少し皆から外れよう。」
目に少し涙を浮かべ笑うアリウス。
そんなアリウスを見て、レオナールは何故か分からないが両親とは異なる安心感に包まれた
「はい。かしこまりました。」
レオナールは、二つ返事をして立ち上がりアリウスについて行く
そんな中、ふと思い出した様にアリウスは立ち止まり貴族連中に振り返る
「あっ、因みに此処に私がいた事は内密にするようにな。あと、ここでの決闘の内容は全て忘れ他言無用だ!もし、他言する様であれば、それ相応の覚悟を持つように…。グラエス公爵、貴様もそれで良いな?」
了承の意しか受け付けないと言わんばかりにアリウスはグラエス公爵を含む全員に伝えた。
直ちに全員が了承の返答をする。また、グラエス公爵家からしても、嫡子の醜態を晒してしまったことを他の貴族に露呈することを避けられ、決闘を行い国法に背いたことや脅迫したことを水に流してくれるというのは願ったりの事であったため頭を垂れながら了承した。
了承の言葉を聞いたアリウスは、納得した表情で頷き前方に向き直り歩みを進めレオナールと共に訓練場をあとにした。
『…………ねぇ、主?』
訓練場を出てすぐのこと…テネブラエが念話で語りかけてきた
『どうした?』
『……あの貴族に注意した方がいいよ。………主とその王子に憎しみと負の感情が渦巻いてる……。』
『テネブラエも感じておったか…。そうじゃの…儂もあの者から禍々しく只ならぬ憎悪を感じておった…主、念頭に置いておくべきじゃな。』
『……ルーメンまでも言うとなれば只事じゃないな。まぁそりゃあんだけ一方的な展開になって、殿下にまで見られてたんだから恨みもするだろうな。ありがとう!また何か感じたら教えてくれ。』
『了承じゃ。(…うん。)』
レオナールは念話でテネブラエとルーメンの忠告に感謝した
「どうした?何かあったのか?」
アリウスが足を止め立ち止まっているレオナールに疑問を浮かべ声を掛けてきた
「あっ、申し訳ありません‼︎少し考え事をしてました‼︎」
足早にアリウスに追いつき後を追っていく。
………訓練場内にいたグラエス公爵の怨念を背中に受けながら……。
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