神戸
「―っていうような話。どう?」
「どお?って言われてもなぁ。なんかめちゃくちゃな展開の小説やなぁ。しかも俺死んじゃうことになってるし。こんな終わり方ないわ・・・絶対。」
「そこがいいとこなの。みんなの大方の予想を逆手にとって、別の方向にもって行くのがいいんじゃない。ミスリードとはやるわね、なんて思わせたいのよ。」
( なんか絶対ちがう気がする・・・。^^;)
「そもそもブログで葵になって好きな人にアプローチするところってどうなんやろ。まわりくど過ぎへんか?」
「わかってないなぁ、あれはいきなり告っても関心がなかったヒロシがOKする確率は少ないと思うから、ブログでじっくり人なりを気に入ってもらって、気持ちが盛り上がったところで会うって作戦なのよ」
(う~ん・・・)
「それに大体、大学時代の同級生がいくら両親に頼まれてもあそこまでするかなぁ。しかも、知子お前のキャラが真逆のように描かれてるし。」
「そっかなぁ、ボクは本当は内気でおしとやか女性なんだけどなぁ・・・。」
「あはは・・・どこがやねん!てか、この登場人物に俺や5人の名前を当てるのやめへん?」
「いいじゃん、それぞれのキャラがぴったりだし。」
「俺は、こんな怒りぽくもないし、単純でもあらへん。」
「ほら、もうムキになってるじゃん。ソックリ・・・。」
「だから・・ちゃうって。」
「いい~や、絶対そっくり、ヒロシのハマリ役!」
「ああ・・・疲れた。もう、どうにでもゆうてくれぇ。」
夏、穏やかな午後の神戸。
列車は静かに駅を出発した。
「しかしなぁ、そんなことになってたなんてな」
健二が後ろに流れる景色をみながら呟いた。
「俺はなんかそんな気がしてた。てか、そういう嫌な予感は当たるからな」
缶コーヒーを片手に隣の守が答える。
「あ、そうかお前は・・・」
健二が言いかけたのを遮るように守が言う。
「あ~、もうそれはいいから!過去のことやし・・・」
しばらく二人は沈黙した。お互いどう言葉を続けたらいいかわからなくなっていあたからだ。
先に口を開いたのは健二だった。
「久々にみんなで会うのはわかるけど、こんなに早く行く必要あるのか?東京着いてもやることないと思うけど。」
健二は話題を変えるつもりで言ったのだが、半ばやれやれといったような表情で守が言う。
「だからおまえは・・・気を利かせるってこういうことやろ?」
健二は納得したように頷いた。
「大人だな・・・おまえ」
守は携帯を見ながら静かにつぶやく。
「ただ気まずいだけや・・・」
休日の神戸の風に吹かれながらカップルが憩うメリケンパーク。
夕日に照らされたポートタワーがまた違った表情をみせている。
「今日の待ち合わせ何時だっけ?」
知子が海を眺めながら聞いてきた。
「19時。」
俺は携帯を見ながら答えた。
「もうそろ行こっか?」
時計を見ながら知子が言った。
「そやな。今メールが来て、守と健二は用事が出来たので一足早く東京に行ってるって。」
俺は答えて空を見上げた。
新神戸駅。陽の光を流線型のボディーに反射させながら列車がゆっくり動き出す。
窓の外に視線をやりながら知子が言った。
「そろそろ、みんなのところに届いてるかな?」
俺も知子越しに窓の外を見ながら答える。
「そうやなぁ、もう着いてる頃ちゃうかな。みんなビックリしたやろうな、いきなり俺たちの結婚式の招待状が届いて。」
黄昏色の街を抜けて特急列車がスピードをあげて走り去っていく。
二人の新しい未来を乗せて―。
【完】
Summer Invitation2~黄昏超特急 @tabizo
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