第6話 思いもしない所から
彼女はとても明るい笑顔を持っていた。彼女の周りにいる人は彼女と関わることで自然と笑顔になるくらい、彼女の存在は大きかった。それは彼女が生徒会長とかではなく、委員長とかではなく、世界を股にかける人とかでなく、普通の女性としての存在価値である。要するに、自分の中での印象だ。だからこそなのだろうか、こんなにも彼女を助けたいと動けるのは…
「修作?きいているか?」
そう言ってきたのは良介だった。
「ん?なにが?」
「いや、今度の遊びのプランだよ。お前の提案だろ?しっかりきいてくれよ。」
「あぁ、ごめん。」
いきなり、乗り気のないところをおみせして申し訳ない。なんせもう何十回とループして、なんの手がかりもなく日々を過ごしてしまってるもんだから、テンションなんて上がらないんですよ。
「でさ修作、この日なんだけど…」
そう会話をしている良介をほっといて、頭の中で今までのループの結果を整理していた。今までとは違う道を通ったり、積極的にアプローチしてみたり、時には見守ってるだけだったり、一回一回違うことを試してみたが、結果的にたどり着くのは彼女の死であった。決まって死因は車との衝突事故である。それをずっと繰り返してきました。情けない限りです。すみません。
そして今日は今までのループでは彼女と2人きりで遊ぶのが多かった日であるがそうはせず、今後のプランを立て未来を見据えるようにした。絶賛前向きに検討中だ。
「修作、今日はもう帰ろうや。」
「えっ?なんで?」
「ぼーっとしてるの多いし、顔色も悪い。体調がすぐれなさそうだから今日はもう帰った方が良いんじゃないか?」
「いや、そんなことないけど」
「ともかく、今後もあるんだから今日の残りの講義は俺に任せて、帰ってゆっくり休みんさい。」
どうしようか迷ったが、頭の中を整理するためにも今日は帰ることにしよう。
「じゃあ、お言葉に甘えて。今日は帰ることにするよ。」
「あぁ、後は任せとけ。じゃあな」
「じゃあね」
良介と別れた後真っ直ぐに家に帰ることにした。このまま何もしなくてもループが始まるだろう。どうせなら次のループのために備えてもいいだろう。そう思いながら家路に着くとふと彼女を見かけた。1人だ。彼女もまた家に帰ってる途中なのだろうか。そう言えば彼女の家とか知らないままだ。それなら家を知っておくのは損ではないだろう。彼女には申し訳ないが尾行することにした。
彼女の家はいつも彼女が死ぬ場所に近かった。途中ここでまたループが始まるんじゃないだろうかとひやひやしたこともあったがそのようなことはなく安全に彼女の家に着いた。どうやら一人暮らしみたいだ。あれ?なんか前は実家暮らしと聞いた覚えがあるが俺の聞き間違いだろう。なんせ、ループしまくりなんだから。
彼女が部屋に入るのを見届け、俺は自分の家に帰ることにした。その時、彼女が部屋から出てきたのだ。とても慌てている様子で心配になったのもつかの間部屋から1人の男が出てきた。中年くらいの見かけで高校生か大学生の子供がいるような雰囲気の男だ。すると彼女が声をだす。
「なんで、ここまでいるの?」
「お前が心配だからだよ」
「心配とか言っておいて本当は違う目的だったんでしょ?」
「いや、そんなことないよ。だいたい、親に向かってそんな言い方はないだろ?」
「勝手に親とか言わないでよ、私はあなたのことを親とか思ったことはない。」
「そうか、だったら話は早い。今すぐ部屋に戻りなさい。」
そう言って彼女は部屋に引っ張り込まれた。彼女も少し油断していたところもうかがえ、あっさりと男につかまった。そう言えば「親」とか言ってたから父親なのかな?そう思っているとふと彼女の顔が脳裏に浮かんだ。いつも彼女を思う時は笑顔だったが、今回は彼女の慌てている様子の顔が浮かんだ。ついさっき見た表情だ。その後、自分の体は自然と彼女の部屋に向かっていた。それはもう今まで感じたことのない突風感だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます