第12話 責任転嫁します
そう、私は何にも見てない。
深湖が現実逃避に走っていると、深湖の腰を抱くルプスの腕にグッと力が入る。
「で、どうする?」
ルプスの冗談に翻弄されていたが、男の口からもルプスの口からも、加護という言葉が出てきた。
「えーと、加護?
のことですか??」
「そ。」
どうやらその部分は冗談ではなかったらしい。
「と、言われても……」
深湖にはさっぱり何のことだか分からないし、やり方も知らなければ、勿論絶対に出来っこない。
「そもそもどうしてこの変た…
いや、この人の家族の話になるんですか」
ルプスが部屋を出て行き男を確保してる間に何があったのか。何故敵の家族の話になるのか。
加護というものがこの世界でどんな意味を持つものなのかは分からないが、深湖の安直な想像では護り。何かから対象を守る不可視の力のようなものを想像している。
「あー、なるほど。その部分の説明からだったか。すまん」
ルプスは深湖の記憶がない事を思い出したのだろう、その部分は深湖にはわからない。つまりこの世界の文化や摂理に関する事なのだ。
「いや、この際まあいい。後で説明してやるから、今は俺の質問に答えろ」
頷いた深湖を見て、ルプスは口を開いた。
「この男が憎いか?」
深湖は考える。
間違いなく好きではない。された事がされた事なのだ、好きになる要素はない。
憎いかと言われれば、少しは憎いような気もする。それだけの気力と体力を消費させられている。
だが殺したい程かと問われれば決してそうではない。
「何か罰くらい当たればいいと思いますけど、脚でチャラかな……」
そして深湖は結局そう答えた。
男はこちらを殺すつもりで矢を射てきたが、結果的に傷を負ったのは向こうだ。
それ以前にルプスは殺されそうになっているのだから、ルプスに世話になった深湖としては秤がルプスに傾くのは当然の事と言える。
「じゃあ祈ってやれ」
ざっくりし過ぎて分からないが、いい加減この状況にも飽きた。
深湖次第でこの状況が終わるのなら、取り敢えず祈るだけでいいのなら、深湖はどうにでもなれという心持ちで男に宣言する。
「加護が授かるかは知りません、もしダメだった時は祈れと言ったルプスを責めてください!」
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