Side〝D〟-4 収束への流転
さて皆さん。
前回、タブセ・ユリカとわたしの会話は寸断されました。
Side‶破〟に移ったからです。
一体、Sideにふられた文字は何なのか。
その答えは、一つでは無いのでしょう。
皆さんは‶影の病〟なるものをご存じでしょうか。
陰鬱な響きですが‶ドッペルゲンガー〟と言い換えれば、肩透かしをくらうかもしれませんね。
しかしここ、Side‶D〟がドッペルゲンガーの‶D〟なのでしょうか。
ドッペルゲンガーについての書籍なら、わたしは、エドガー・アラン・ポー著『ウィリアム・ウィルソン』をお勧めします。ただのオカルトのものではなく、一つのことがらにも、国や時代により様々な表現があるとわかるでしょう。
まさに言葉巧みに、見当違いの方向に向かわせる……わたしもこの迷宮に、まんまと引っかかってしまった。
では、まいりましょう。
今回も、わたし、桐谷有ことソフィ・マクガ―レンが案内いたします。
#
場所は丈治の住むマンションの近くにある、ファミレスですね。
サイコはパフェを食べながら、解説しています。
ちょうど、わたしがSide‶L〟に飛ばされる直前。
「ボクが事件を知った経緯には、両親が絡んでいる。ボクの父は警官だったけど、唯我独尊のうえ、まず、興味のあることしか話さない」
「親父がいたのかよ」と丈治はパフェを食べています。
「きっと家族の仲は良いと思う。現在は外国で、のんびりと夫婦で私立探偵をやっている。ときどきメールやスカイプで話をしてるが、夫婦共々、あらゆる面でレベルが違いすぎる……特に父。あんな人からボクのような馬鹿が生まれるとは、神様はおかしい」
「何か、べた褒めだね。ファザコン?」と有巣は言いながら、自分のパフェを丈治へプレゼント。
「好意では無く、劣等感からのコンプレックス。去年の誕生日に、お祝いメールが来た。文面はURLとパスワードらしき英数字のみ。繋いでみると、完全会員制の闇サイトだった。古今東西の事件について、多種多様な人種、経歴の連中が意見交換して……ほとんどは、そこから仕入れた。丈治くんの読み通り、ボクは警察にはハッキングしていないし、正式な資料かどうか怪しい」
サイコは隣に置いた、大きな黒バックをぽんと叩く。
「ただしボクを含む全員のプロフィール、住所や電話番号、写真まで晒されてね……父から『一日三時間、必ずログインして発言しろ、しなかったら罰金。また、そのサイトについてや、記載された全ての情報をリアルで利用するのは、ご法度』と……普通、そういうのに引っ掛かるボクではないけれど、父が登録してて……誕生日は、もうこりごりだ」
「なんだよ、つまり蛙の子は蛙。今日、同じようなこと俺にやったくせに」丈治は自分のパフェを食べ終えて、すぐ有巣からのパフェに。
「父を知ってたら、褒め言葉だよ……で、そこはプロフィールが晒されているだけあって、不確かな情報や不謹慎な意見は、ほぼ無い。おかしな言い方だけれど、信用できる情報ばかりだ。
真幌女子高校についての意見は、過疎気味で現在はほぼゼロ。けれど概要、全てが図書室で調べたものと符合しており、かつ、写真や資料でもって補完されていた。ここまでは言い訳。ここからが、重要だ」
サイコはつらつらと喋り始めました
「十年前、
そこで有巣が声を上げます。
「ほんとに唐沢先生? きっついんだけど」
「誰?」
丈治の問いに、有巣は「
サイコは続けます。
「そんな彼女を不憫に思い、
引越し先は、真幌市東区の一軒家。同居人として
事件後に誤解だったと判明するが、有紀と新井が何気ない会話をしていたところを嫉妬深い彼女は問い詰めてしまった。そんな気などないと有紀は反論したが、結局、追い出された。実家に帰っても弟が怖い。当てもなく街を歩いていると、新井が電話をかけてきた。涙混じりに理由を説明し、宿をねだると、新井のマンションに招かれ一夜を過ごす事になる」
「昼ドラかよ」
丈治のツッコミにサイコは返事の代わりに新たな資料をバッグから出しました。
「その翌日。午後七時。真幌女子高の生徒は下校し、教員も帰宅するころ、悲鳴が上がる。
真っ先に駆けつけたのは新井だった。見つけたのは、腰を抜かした女生徒と唐沢有紀の変わり果てた姿だった。背中を切り裂かれ、両足、両手、ばらばらに外されて曲げられ、マリオネットのように倒れていた。眼球をえぐりとられて、舌を引き抜かれ、腹を裂かれて内臓をすべてぶちまかれ……犯人を見た人間はいない。見ていたのは、壁一面に飾ってある大きな鏡だけ。その鏡には血の文字があった。
口外すると誰でも殺す。その文字の血液はDNA鑑定の結果、唐沢有紀のものではなかった。
同日に発見されたホームレスの変死体と一致した。このホームレスは生前、ゴシップ記者に唐沢有紀と牧川雪路の痴話喧嘩を目撃し、情報を与えて些細な報酬を貰っていた。無論、記事になるわけも無い。
女子高の事件以後、そのゴシップ記者を含めた、不審死が三件続けて発生、そのたびに鏡に血文字が書かれた。
口外すると誰でも殺す。その血液はやはり事件に係わるか広めようとした人間の血だった。
ゆえに学校と警察、マスコミも結束して事件をなるべく封殺し捜査を地下で進めることにした……こんなところかな。自主規制をし、わかりやすくしたつもりだけれど」
ホームレスや、記者の惨い遺体写真を見せて説明し終え、サイコが目をやると、有巣が丈治の胸にしがみついていました。とうの丈治はしっかりと聞いて、そして考えに考えています。
――こんな事件が実際に起こっていなくても、すぐ身近に似たような犯人らしき人物が存在する。
自称霊能力者に悪霊がついていると宣言されるより現実的で、タチが悪い。しかも有巣たちは知らずにどうどうと、面白おかしくしゃべっていた。犯人が聞いていない保証はない。
とうの犯人はそれを聞き、何を考えているのか。殺すリストでも作って、名前を綴っているのか。
もしかすると、サイコのように住所をつきとめ、誰かの家を監視、潜伏しているかもしれない。俺の部屋は安全だとしても、有巣の実家は――
#
「じゃあボクは帰るよ。怪談としてもじゅうぶんだろう」
サイコは立ち上がって資料をまとめます。
すると、丈治がその腕をつかむ。
無言でサイコと丈治の視線が合う。
微動だにせず、二人は見つめ合いました。
丈治の勘が、そのまま言葉になります。
「おまえは、どうして、この事件を疑った?」
その一言に、サイコは微笑み「そうきたか」と。
「リアルの死は痛烈だ。だからこそ報道する価値があるし、規制対象にも成り得る。だが、この事件は写真こそ強烈なものの、概要はどんな言葉で表しても、あっさりしすぎてリアリティが無い。キミがどんな印象を受けたかわからないけど、ボクは、それこそ都市伝説に思えるね」
「バーチャル感覚ってやつか?」
「犯罪はすべからく悪だ。リアルの殺人犯なんてクズ。それを楽しみ、煽る人間はそれ以下。ボクは後者に近いかもしれないが、キミの部屋に侵入した件は、暴行される前提と、有巣に本気で嫌われる覚悟での、苦肉の策だった」
「そこまで考えて、やったのは、おまえが犯人の標的にならない方法を、知っているから。それを教えるためだった……ちがうか?」
するとサイコは、まじまじと丈治を見つめて、笑って言う。
「丈治くんなら、父の話に着いて行けるかもね。今度、紹介しようか?」
「そりゃどうも。でも、友人としてな。俺には有巣がいる」
その丈治の返事を聞いてサイコは、出会ってはじめて、声をあげて笑いました。
――てっきりサイコの笑い声は汚いものだと思ってた。普通の、ありふれた女の子のそれじゃん。 でも――
「こっちは冷や汗もんだ。続けよう。このままだと、有巣が笑えねぇよ」
丈治はケータイを見ます。
まだ午後七時半ですね。
「とんだ怪談話だ。犯人を見つけないと、恋人の命にかかわるなんてよ」
有巣の肩を抱きしめ、丈治は資料を催促しました。
#
三名は丈治の部屋に戻りました。
時間は午後八時。
#
唐沢仁(24)
真幌女子高、体育教師。空手部顧問。
十年前の被害者、唐沢有紀の弟。当時から家でも外でも暴力沙汰を起こし、警察に補導されることも多々あった。特に姉と母親への暴力が目立つ。
当日にアリバイあり。
牧川雪路(44)
真幌女子高、教頭。
十年前、真幌女子高の国語教師だった。被害者と口論する証言が多数あり、その 原因は当時の恋人との揉め事。事件後、結婚するがすぐに離婚。
当日にアリバイなし。
新井新太(35)
真幌女子高、科学教師。科学部顧問。
十年前、被害者とともに赴任し、言い寄っていた。当時から女遊びが激しく、牧川とホテルへ向かうところを目撃されている。事件後、牧川と結婚するものの、すぐ離婚。原因は不倫。
当日にアリバイあり。
「あやしいやつばっかり」
立ち直った有巣は、事件の容疑者候補を簡潔にまとめ、メモをとっていました。
サイコの資料はもっと緻密に、身長や体重、持病や通院記録まであったのですが、あまりにも細かく、膨大で、かえって混乱しそうで、要点だけ簡潔に絞ったのです。
「人間ほど、過去を隠したがる生物はいない。掘り返すのも、また人間だけ」
悟ったような台詞をはくサイコの言葉と、有巣の言葉を聞き、丈治は考え続けてています。
サイコは勝手に電子レンジから、解凍したピザを取り出し、テーブルの隅に置く。一人で食べ始めました。
「ツワモノだよ」
ピザに噛り付く音と、サイコの声。
何を表しているのか。二人は理解できない様子。
一切れを食べ終え、指についた油をなめながら、サイコは言います。
「もしこの事件が真実だとして……家族や同僚が惨殺された場所で働くかい? ふつうの神経なら尻尾まいて逃げる」
あっ、と丈治は声を上げました。
彼の中でパズルのピースがすこし、繋がったのです。
――逃亡はない。このサイコの言葉は、被害者の遺族や恋人がそろって働き、全員が容疑者候補という異常事態をあらわしていた。
普通の神経なら、犯人は現場を去る。
被害者の関係者なら、なおさらだ。それなのに彼らは働いている。
未解決の猟奇殺人、その現場で働く、容疑者候補の三人。
何のためか。それは――
「監視だ! こいつら、互いに見張ってやがるんだ!」
丈治は立ち上がって説明します。
「つまり、三竦み! この中の一人が逃げようものなら、犯人は追って殺すだろ? それを阻止するためにひっついている! どうだ?」
「なるほど」
有巣は感心したように何度もうなずき、なるほど、と何度も呟きます。
満面の笑顔で、丈治はサイコに意見を求めました。
でも、サイコは黙々とピザを食べるだけ、ノーリアクション。
「こら、人の意見を無視すんなよ! 協調性ないやつだな。合コンできないぞ?」
言葉は荒くても、丈治は笑顔。
散々、馬鹿といわれたのを見返してやったという喜びからです。言い返すことができないのだと確信しています。
#
そのまま数分が過ぎ、サイコはピザを食べ終え、ティッシュで手を拭く。そのあいだ、誰も声を出してません。
「丈治くんを、友人として父と会わせたいな」
――ついにサイコが俺を認めた。
丈治がガッツポーズをしようと手を上げた瞬間、雷光のような言葉がサイコから。
「褒めるとすぐ、調子に乗る。文字通り父なら、口で操作できる」
ぽかんとする丈治
「元警察官、現探偵の娘として、とりあえず五項目の疑問と質問だ」
サイコは津波のように言い返します。
「一つ。ボクは、仮に事件が事実ならば、有巣が、無為にこいつらに近づくのが怖く、それを避けたいから目星を立てたい。ついでに丈治くんは事件を面白い話にしたいだけだろう? 推理する必要はないのに、突然、どうした?」
「……」
「二つ。推理するなら、ボクの仮説を無視し、新たな仮説を産んだ根拠は? 与えられた資料はすべて警察から流れたもので、ボクはそれすら疑っている。キミはこの資料に疑問が有るのか無いのか、立ち位置をはっきりしてくれないか?」
「……」
「三つ。情報は言ってくれれば、もっと提示するのに、どうして今あるものだけで満足した? 何故、過程を飛ばして結論を出した?」
「……」
「四つ。ボクは数分も黙って待っていたのに、何故、解決策を言わなかった? キミ自身、実はその説を打ち立てた根拠が、一過性の感情のものだと自覚しているんじゃないか? そして途中でそれに気づいたけど、面倒になって無理やり押し通したんじゃないか?」
「……」
「五つ。丈治くんは、有巣が一歩間違えれば……と、本気で考えているのか?
去年の誕生日、ボクがサイトの件で父に文句を言った際、父の言い訳は、すごくショックだった……『事件概要と容疑者候補を見ただけで、解決する安楽椅子探偵など実在しない。あのサイトのように膨大な資料と人間を相手に、何週間、何か月、何年もかけて確たる真実を掴むのが、実際の警察、探偵、犯罪学者やプロファイラーたちの‶仕事〟だ』
『この‶仕事〟に必要なのは、時間、情報、人脈、慈愛、持久力、そして覚悟。得られる報酬は‶今日一日、家族、友人、クライアント、隣人や、みんなの安心、安全だけでじゅうぶん〟と思えないとできない』とね」
「……」
「父は、いつも必ず、死を考えて、恐れていると言ったよ。ボクを置いて海外へ行った理由も、それに準ずること……『リスキーな‶仕事〟だ。だからこそやりがいがある。だが‶有形の成果〟のために‶仕事〟を忘れ‶自己満足〟や‶趣味の延長〟にいつしか没入してしまう。客観性を欠いた偏見を混ぜ込み、口や文章でもって、気づかず、冤罪者をつくっているかも知れない。怨恨をかったり、真犯人を野放しにしたり……それが‶最も恐ろしい犯罪〟で、それを自分自身、起こしていないか、加担していないかと疑心暗鬼になって銃を手放せない。いつ報復があってもおかしくない。毎晩、ベッドにリボルバーを置いて寝る。狂って、自殺しないよう、夫婦で見張り合うように……それでも‶仕事〟だから辞められない』……そこまで自分を追いつめながら‶仕事〟して社会的に信用、信頼、収入を獲得し維持して名実ともに生き残っている両親を、ボクは娘として尊敬する。
だがボクらは父より安全と言えるか? うさんくさい噂に事件だ。だが程度の差は有れども、悪人は確実に実在する。ならば〝最悪の事態〟を考えて‶打開、回避〟するべき。キミが‶事件に迫る側〟なら、最低限、持っておくべき心だ。失念して無いか?」
「……はい。すみません」
「おまけ。ボクは丈治くんをもう、馬鹿にしていない。さっきのファミレスで、こと、この手の話なら、父と同じレベルになる‶
ふうと息をついて、サイコはオレンジジュースを飲む。
「ここに父がいたなら‶もう一度考えようか〟と言うだろう。ボクは慣れてるけれど……疲れただろう? もう止める?」
「いや、俺は続行する。有巣、大丈夫か?」と言いつつ丈治はソファにもたれかかります。そして隣の有巣は「サイコが、色々、マジだってわかったよ。むしろ歓迎」と。
「無理すんな。おまえの強さは、良くわかったよ」
丈治は優しく、有巣の頭を撫でて、言いました。
「タイムアウト。有巣がグロッキーになってる。シャワーでも浴びて来いよ」
そう言って丈治は有巣を抱え起こし、シャワールームへ向かいます。
サイコも立ち上がって言います。
「ボクも御手洗い。あと、PCを繋いでも?」
「どうせなら俺のを使え。安物でスペック低いけど」
「いいのかい? 変なサイトに入ったりするかも」
「信頼してるよ」
サイコはトイレへ向かいます……おや、立ち止まった。
トイレのドア開けて、便座を眺めていますね。
そして何故か、ピースサインを、ドアに向かって見せて、ドアを閉めました。
#
一時間後。
午後九時半を過ぎました。
有巣と丈治は、交代でシャワーを浴び、ジャージ姿です。
サイコだけ黒のワンピースのまま。
「では……警察サイドから迫って、整理しよう。事件概要は、もういい?」
サイコは、バッグから出したノートPC一台と、百枚以上もの紙の山をテーブルに置いていきました。
「暗記には自信ある。何なら言ってやろうか?」と丈治。
サイコは右親指を立てて見せ、資料を並べながら言います。
「では容疑者候補としての理由。被害者の親族、恋人や同僚のなかから、悪意をもつというありふれたことで警察は彼らを洗い、現在も監視下にあるらしい」
サイコは次にノートPCのキーボードをたたきました。
彼女の閲覧しているのは、情報サイトのコメント欄ですね。
おそらく父親に登録させられた闇サイトでしょう。
真幌女子高校の事件についての概要が、ずらっと書かれています。
サイコは動機の項目をクリックして眺め、丈治らに資料を見ろと言います。
「サイトの意見もばらばらでね……まあ、動機はポピュラーだがじゅうぶんだろう。ただ殺人の経緯だが、ここがわからない。警察サイド、犯人サイドに立っても理解し難い。だから資料がデマ、ガセの可能性もある。ただし、ここまで精巧なものを作る理由なんて考えられない……わかる?」
サイコはPCを丈治らに向けて、遺体写真を見せました。
丈治と有巣は、すこし免疫がついたようですね。
冷や汗を浮かべながらも、その悲惨な写真を観察します。
「もし偽物でもだ、異常だぞ」丈治は言いました「通り魔の線は現場の状況と、検死による死亡時間で消えるな。事件が真実として……この三人の誰が、そこまでするんだ?」
丈治の言うことは、午後七時の学校という空間は密室にちかい。部外者の出入りはすぐわかりますから。
丈治は遺体の検死結果を読んでいます。死後、一時間とありますね。よって、学校内にいた生徒と教員に絞って考えるべきでしょう。
――被害者に尋常でない恨みを持っていたとしても、やりすぎだ。
丈治は、テーブルに並べられた、容疑者候補の資料を探し、牧川雪路の写真を叩きました。
「でもこいつなら、やりかねないかも。被害者に凄まじく嫉妬しているし、事件後に新井新太と結婚している。アリバイもないし、動機と目的が一致するだろ?」
うんうんと有巣とサイコはうなずく。
「彼女を第一候補としたいのは、誰もが共感できるはずだが」とサイコ。
「それでも納得できない。彼女は極度の血液恐怖症だ。自分のメンスで気絶したこともある。そんな女性が、こんな現場を構築して、正常なまま十年も働けるはずがない」
サイコは別の資料を取ってテーブルに。
牧川の通院記録です。
それを読んで有巣は、そうねと呟く。
男の丈治は、頬を掻いて理解に苦しんで、別の資料を読みました。
「全員が事件後、メンタルチェックを受けて……PTSDの
「酷いな。せめて子供っぽいと」
そのサイコの言葉に有巣は反応しました。
「唐沢先生! 実戦空手の有段者だもん、精神は屈強だし腕力もある」
「うう、うーん。そ、そう? なあ?」と丈治は腕を組んで曖昧な返事。
丈治は、サイコに視線を送る。彼女はうなずいて言いました。
「スポーツや格闘技といった過酷なトレーニングを積んだ人間なら、体力もメンタルも強いはず。でも……アリバイの項を読んだかい?」
資料によると唐沢仁は事件の日、真幌女子高で女生徒と密会していた。体育館倉庫で教師に発見され、半裸で指導室に連行されたと。
指導を受けた後に悲鳴を聞き、現場に興味本位で訪れた。第一発見者の女生徒が、唐沢仁の彼女だった、とありますね。
「現在の彼は厳格で、絵に描いたような体育教師だが、事件当時は十四歳。盗んだバイクで走りだすような年頃だ。あやふやな存在だね。暴力沙汰の絶えない荒くれた時期だからこそ、衝動的な殺人なら、わかる。でも、連続殺人に繋げるとは……どうかな?」
そしてサイコは丈治を見ながら、こめかみを二回、叩きました。
丈治は頷き、新井新太の写真を探し出して、紙を叩いて見せる。
――わかってるじゃんか。あんまり有巣を不安にさせたくない。
丈治とサイコは、意思疎通できるようになった様子。
もちろん、テレパシーではありません。アイコンタクトのようなもの。
「こいつはもっとあやふやだな。アリバイはあるが、動機もある」
丈治は紙をテーブルに置き、学歴の項を指し、有巣に読ませる。
サイコはノートPCの向きを戻し、液晶画面とにらめっこしています。
ふむ。新井新太は国立の心理学部を主席で卒業していますね。
そしてなかでも、犯罪心理学で際立った功績を残し、そちらでは有名人だと。
「第一発見者が犯人って、推理小説とかのセオリーを知ってて、女生徒をそれに仕立て上げた……ってのは」
丈治の呟くような、自信の無い声。
サイコはきっぱりと言い返しました。
「無理がある。そんなことぐらい誰でも思いつく。やったとしたら、これは完全犯罪だよ。自慢したくなるだろう」
液晶画面を見ていたサイコは、ちらりと丈治に目をやる。彼は有巣と意見を交わしていました。
ここまでわかっているなら警察に任せるべきでは? 空手部を辞めて、しばらく身の安全を確保し、この三人との接触をさけるべきでは? と丈治は説得していました。
それらを聞きながらサイコはポケットから、カットグラスを取り出し、掛けました。再びPCに向かい、キーボードを叩き、素早く文章を書き起こしていきます。
#
有巣は考えこんで、ついに、学校を休もうかな、と呟きました。
「それがいいって。やべーよ、こいつら」
その至極、真っ当な丈治の意見に、サイコは肩をすくめて言いました。
「こうなるから有巣に聞かれると困ると。でも二人とも、わかっていないようなので、確定事実を提示しよう」
サイコはノートPCをぐるりと回して二人に向けます。
わざわざで打ち直された〝五時ババ〟の文章ですね。
何をいまさらと、二人は頭をかかえる。
「逃亡の線はない、この怪談の改ざんに携わったから。これは覚えているかい?」
ああ、と丈治がうめき声にちかい返事をします。サイコは続けました。
「ボクの話がオリジナル、今書き直した、これだろう? 意図的に歪められたのが有巣の話だろう?」
うん、と有巣もおぼろげに返事する。
サイコは「なら、これでじゅうぶんじゃないか」と言ってのける。
意味不明な言動で二人はますます頭がこんがらがる。
「もし事件が事実ならもう、有巣の身の安全は、現在の有巣の状態でわかるじゃないか」
「わかるかっ!」
混乱の極限に達した丈治は怒声を上げます。
有巣も、顔をひきつらせて、それに同調しました。
「こんな容疑者だらけの学校、いつ事件が起こってもおかしくないじゃん! もっと真剣に考えようよ!」
はあぁ、と大きく息を吐き出し、サイコは不安から激情する二人を、たった一言でなだめました。
「この後、九年間も事件が起こってないじゃないか」
「事件?」
二人のすっとんきょうな返事に、サイコは、よくよく文章を読めと。
しかし……何度読んでもサイコの言っていた、オリジナルの〝五時ババ〟です。
サイコは、カットグラスを外して言います。
「タイトルがおかしいことぐらい、若手芸人の勢いで、真っ先にツッコんでほしいね。そこから色々、考えられるはずだろう?」
「あ……ああっ!」
二人は放心し、ソファにもたれました。
なるほど。そういうことですか。
皆さん、有巣の話は〝五時ババ〟で間違いありません。
何故なら、午後五時に鏡の前に云々という設定があるからです。
でも、こちら、サイコのオリジナルは午後七時になっている。
これでは〝七時ババ〟といったほうが正しい。
丈治も気づいた様子。
――〝五時ババ〟を犯人の前で演説しても、犯人はしてやったりと笑うだけ。何故なら〝七時ババ〟の話が見事に、思い通りに変わった証拠を提示しているから。
その有巣を含めた生徒を殺す理由もなく、近年、殺人事件などいっさい起こっていない。
逃亡の線はない。何故なら、大鏡が移動したとき、噂を改ざんするため近くに潜伏する必要があるから。これがサイコのたどり着いた一つの真相だ――
「犯人の掌でおっかなびっくりしていたわけさ。でも、それでいい。命あっての人間だもの。推理ごっこに励むより賢明だ」
ノートPCの向きを戻しながらサイコはまた、悟ったように言ってのけます。
「だからそういうことは最初に言え! 不安感を煽り、頭脳労働させるまえに!」
丈治は声だけ威勢良いものの、体はぐったりとしました。
「ボクも悪気があったわけじゃないよ。父がボクを騙したように、ボクがここを乗っ取ったように、護身のすべと重要性は、時間と身をもってわからせるしかない……さて、ボクの目的は達成した。でも、謎は全く解けていない。ここからは正真正銘の、推理ごっこだが?」
「まずは〝七時ババ〟を広めた人物の特定、そして意味。最終目標は、どこまでが真実なのか」
躊躇なく有巣が答えると、親指を立てて、サイコはうなずく。
――ほんとうに女性は元気だ
丈治は、コーヒーを淹れようと、席を立ちました。
「ドリップコーヒー飲みたい人、挙手」
有巣とサイコは右手を上げながらも丈治を見ていません。
「私は犯人が広めたって考える……混乱させようとしたけど、致命的なミスが〝七時ババ〟にあった。それで訂正したとか」
「ならば、最初から口外するなと血文字で書く理由が不明だ……ちなみに隠しているインスタントのほうがいい。砂糖抜き、ミルク多め」
「あ、私、ブルマンのドリップ。砂糖多め、ミルク小さじ一杯」
二人はさならがら喫茶店の常連のよう。
でも丈治はほっとしていました。
有巣の身の安全は証明されたのだから
――有巣はこのまま卒業まで〝七時ババ〟の話をしなければいい。それだけであの、悲惨な犯罪に巻き込まれないはず。
サイコも遠回りでややこしく、えらぶった言い方と行動、挑発するような態度を除けば、しっかりと有巣の身になって考えてくれている、いいヤツだ。友人としてなら、たまにこんな話をしても悪くない――
#
「へい、お待ちどうさま」
丈治は注文どおり、インスタントをサイコに、ドリップを有巣と自分の二杯分、テーブルに並べます。
資料でごちゃごちゃしたなか、それでも空いたスペースを確保し、置くと、丈治に一つの疑問が。
――何故、サイコはインスタントコーヒーがこの部屋にあると知っていたのか。
このインスタントコーヒーは不味く、口にあわなかったから、キッチンの下に隠していたのに。
まさか、この女――
声に出さずとも丈治の視線が、サイコに答えを吐かせました。
「他人の部屋を探索するのは人の性。推理ごっこもまたしかり」
コーヒーをすすりながら、さもなんともなしにサイコは言ってのけました。そして狐のような笑顔。
丈治は直感しました。
――これはこいつのクセだ、人をおちょくるとき、狐のように目と口が細くなる。
「ちなみにベッドの下に」
「よし、推理しましょう! がんばって犯人を特定しましょう、二人とも!」 サイコの口を手で塞ぎ、丈治は有巣の興味を資料に向けさせます。
――まったく、何でこんなやつと友達になったんだ。
有巣の趣味を疑ったとき、丈治はふと、疑問を漏らしました。
「どっちのことだ?」
丈治の目には新しい資料があります。
それをよく読まず、考えもしない丈治の発言。
慌てて丈治は「いや、すまん」と。
「丈治くん?」とサイコ。
彼女は、丈治も有巣も見ず、並べられた資料を凝視しています。
「続けてくれ」
「どっちの事件を知られたくなかったんだろって。それだけ」
きょとんとした有巣は、視線を動かし、丈治とサイコを交互に見ます。
サイコは資料でごったがえしたテーブルを見つめて、ゆっくり、静かに問いかけます。
「何を見て、そう思った?」
丈治は後頭部を搔きながら説明をする。
「この鏡の血文字。口外するなって、どっち? ホームレスか? 女子高事件か?」
ぐっと、サイコは丈治の手を掴む。
そして、ぶんぶんと振った。
「ナイスアシスト。丈治くん、キミ、最高だよ。父に是非、会ってくれ」
丈治は嬉しくもないし、わけが分からない。
何より気味が悪い……何故なら、サイコの顔が歪んでいます。
笑顔では無い、狐のそれでも無い。
怒りの顔ですね。
サイコは手を離し、テーブル散乱した資料と、山積みになった資料を漁りました。一枚一枚手に取って「これも、これも」と呟きながらバッグに仕舞っていきます。
次に、サイコはノートPCに。
先のサイト、情報投稿者を確認しました。
女性ですね。しかも現役の警官です。
顔写真もあります。
皆さんも、ご存じのはず。
村井しずか。
Side‶破〟にて登場した、あの、激務課の女刑事です。
しかし、彼女の勤務先が変わっています。
真幌市内の警察署ではありません。警視庁刑事局になっています。
「同じヤツがアップしてる……どおりで単純かつ偏見的なわけだ。しかも思考レベルを下げる……くそっ。有巣、県警捜査員名簿・‶た=1〟号を探してくれ。頭が動かない、くそっ。ボクのPCもノロい、髪が……うっとおしい!」
サイコは髪をほどき、きつく縛り直しました。しかし、慌てているのか、口調が早く、荒っぽい。鼻息も聞こえそうに荒い。
「なあ、サイコ。ついでだけど、いいか?」と丈治が一枚の遺体写真を取って、見せます。
「この写真、おかしくないか?」
唐沢有紀らしきの遺体を指さす刑事の写真、ですね。
丈治が最初に見て、拒否反応を起こしたものです。
映っている刑事は男性です。
サイコはひったくるように取るや、すぐ声を上げました。
まさに大声で、
「このポンコツが!! こんなときにフリーズするなっ!!」
と。
サイコのPCは村井しずかの顔写真を拡大しようとしていますが、動作音だけです。
「くそっ、自制できなくなってきたっ! 有巣、間違いだっ、市警捜査員名簿の‶あ=1〟号を探してくれっ! 県警じゃなく市警だっ!」
サイコは叫びながら頭を搔き、髪をむしります。前髪をちぎって、それを床に捨てて手で払う。
「お、落ち着けよ」と丈治は言います。
「落ち着きたいとき、ボクはこうするのさっ! で! キミはこれに何を感じた!」
「こ、こういう写真って、駆けつけた警官、つまり、制服の人が映るんじゃないのかなと」
「一概には言えない! くそっ!!」
「す、すまん、混乱させた」
「違う!!」
するとサイコ床に座って、髪をほどき、何度も頭を床に叩きつけて言いました。
「そいつを疑って正解だよ! くそっ、頭の回転を、幼稚な文面が邪魔する!」
そう言って頭を上げるサイコ。
丈治と有巣は、驚きました。
サイコの目は充血し、顔も声も、鬼のよう。
「丈治くんには言ってなかったかな! ボクは
「そ、そうか。俺は大丈夫だけど、落ち着け。多少大声出しても、今日は許す。でも、暴れるなよ? おまえが痛いだろ? 俺も探すからな、どれを探しらたいい?」と丈治は言います。
「じゃあ遠慮無く!! 丈治くんは県警職員名簿の‶さ=1〟号!! 市警捜査員名簿でも県警捜査員名簿でも無い、職員名簿!! サイトウとかソウトウとかの職員がいたかどうか確認!! 有巣はアオノとかいう男がいたのか確認!! しばらく話しかけるな!! ボクはこのポンコツを再」
「ご、ごめん、丈治、職員のはさっき、サイコがバッグに」と有巣が言うや、サイコはバッグを取り、さかさまにしてすべてをぶちまけて「あーっ!!」と叫びました。
「誰も悪くない!! ボクが馬鹿で馬鹿で馬鹿だから!! あとで死んで詫びる!!」
サイコは空のバッグを壁に投げつけ、床に散乱した資料を漁り始めました。
「脳から言葉が、延髄辺りで引っかかって、上手く言葉にできないっ!! 二人とも撤回する!! 事件発生前の他府県からの来客名簿だっ!!!!」
そこでサイコは身を屈めてしまい、胸を押さえ、息を荒くさせました。
「さ、サイコ。大丈夫か? まだ何も
丈治は歩み寄って、サイコの肩に左手を廻し、右手でサイコの手を握りました。
そして、大きく息をして見せます。
「ほら、真似しろ。すーはー……」と深呼吸をして見せます。
震えるサイコの身体。
有巣も寄ってきて深呼吸を促しました。
二人は四回、深呼吸し、サイコもしました。
「サイコは、興奮するとパニックになるの。でも一過性のものだから」と有巣が丈治に言います。
「そうか」と、うなずいて、丈治はサイコに話しかけました。
「おまえは、親父さんを尊敬してるんだよな。教えをしっかり守りたい。俺も有巣も、それは凄く分かった。でも焦るだけ損する。ほら、俺を思い出せ。ファミレスから帰って来た時な? 俺、焦ってさ、赤っ恥かいたろ? よく考えろ、他府県の資料なんて無かったろ?」
「そう思いたい!! 本当に丈治くんや隣人の女には悪いことをした!! ここまで自分に腹立つのは久しぶりだ!! 後でレイプでもリンチでもしてくれ!!」
「そんなこと絶対にしない」
有巣はきっぱりと否定し、優しく声を掛けます。
「誰も得しないもん。それよりどうしたの? 教えてくれるかな?」
「ボクの状態か!? 都市伝説でいうゲシュタルト崩壊だ!! だが正体は何てことはない!! 叙述トリックよりはるかに低レベル、鬱陶しい構成と文面をにらめっこしていると起きる、ただのパニック!! かかるやつがおかしい!! くそっ!! サイトが過疎ってる時点で気が付いていれば!! 父ならこんなこと!!」
「犯人がわかったの?」と有巣に合わせるようにサイコは叫ぶ。
「説明できない!! 資料を探せっ!! あーっ!! こんな部屋でやるべきじゃなかった!!」
「ゆっくり、落ち着いて、ね。探せば、絶対見つかるよ、ここには私たちしかいないもん」
「違う!!」とサイコ。
もちろんわたしのことを指しているのではありません。
どうやらサイコは何か‶確たるもの〟に行き着いた様子。
しかし、パニックによって言葉にできないと。
「ベッドの下のコンセントに盗聴器!! トイレ、バスルーム、リビング、玄関にもある!! カメラも!!」
「な、マジ?」
丈治が言うや、涙を浮かべてサイコは有巣を見る。
有巣と丈治は目を合わせました。
――俺も、パニくってんだけど。どうしよう?
「サイコがそんなことするわけ無いっ」
有巣は言い切って、すぐにサイコに戻し、聞かなかったことにします。笑って、サイコの涙を素手で払ってあげます。
「今日、会ったばっかりだもん。サイコが仕掛けるわけ無いじゃんか。もちろん、私も。ちょっと怖い話をしすぎたから」
「そうじゃない!! 違うんだよ……こんな、こんな幼稚な手に……」
サイコの声は嗚咽に変わってしまいました。
#
数分後です。
有巣はサイコをソファに座らせています。
声は小さくなりましたが、サイコはまだ、混乱しているようです。
丈治は床に散らかった資料を拾い集めています。
すると、
「サイコ。おまえの探してたのはこれか? 落ち着いて探したら、見つかったぞ」
笑って、丈治は資料を渡します。
サイコは涙を浮かべてその紙を読みました。
その資料は、十年前、ここの県警本部に訪れた人間の名前が、びっしりと。
ですが日付は十月十四日とありますね。
名前も、百名以上もあります。
「くそっ……くそ、くそ」
サイコはその紙をびりびりと破り、ばら撒きました。そしてソファに身を委ねて言います。
「きっと昼間の……もう逃げた……凡ミスだ」
サイコは己の頬を叩いて、天井を見上げて呟きました。
「挨拶したとき、違和感があった……当たり前だ……くそっくそっ……」
「おまえは今日、初めて来たろ。誰だって警戒するって」と丈治は破かれた資料を拾っていきます。
「女が……ここの、キミの部屋の前にいた」
「602号室の人だろ? 俺の部屋の近くにいても不思議じゃ無いぞ。よく挨拶するから」
「違う……そんな偶然、あってたまるか……また、ハメられた……」
「またって、以前にも」
そこで紙きれを拾う丈治の顔が強張り、声も、時間も止まりました。
#
ここで別のSideへの分岐ですね。
さて、丈治の手にあるのは、破かれた十年前の資料の一片です。
わたしの前にもその紙きれがあります。
読むことができるのが、あるか。探してみましょう。
ありました。
警視正、警視庁刑事局所属。
捜査依頼及び、協力目的。
読めるのはここぐらいです。
他にも、無いでしょうか。
ありました。
阿久津カオリ(24)
警部補。
真幌市東区捜査特務一課所属。
丈治の持つ紙きれは、一枚だけ読めます。
狩川リタ(17)
自首。
#
さて皆さん。
では、また。
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