Side〝R〟-2 25 to Life



 

 公判後、埼玉県にある最も新しい病院に少女は隔離され、メンタルケアと学業、職業訓練を受けていた。

 

 特別な施設だった。

 

 六時に起床。ラジオ体操。

 朝食後、ケアの時間。カウンセリングルームに連行された。

 そこでは女医とカウンセリングが主におこなわれた。

 時々、他の未成年らと集団ディスカッションがあった。各々が自分の過去の反省と未来への希望を語り医師がそれを聞き、カルテを取る。少女は何も発言しなかった。誰も咎めなかった。


 昼は学業の時間で少女の年相応、小学生の教科書を与えられた。女性の監視員立ち合いのもと施設の専属教師と授業をし、定期的にテストも行われた。


 食事は大食堂で食べた。食堂は収容されている少女、他の女子五人ずつ横長のテーブルを前に並んで座る。そこに職員が料理を乗せたトレイを配っていく。ありがとうございます、いただきますと皆がいう。箸も含め食器は全てプラスチック製だった。食事前、食事中、食事後、いっさい私話は許されなかった。いつも奇声を発し暴れる子が一人いた。決まって職員に羽交い絞めされ食堂から連れ出された。誰も見ておらず、少女も意識していなかった。


 昼食後、監視員が立ち会って少女と、他五人は外に出された。施設にある屋外グラウンドは外界の騒音や視線を遮り、高く壁で囲まれていた。地面は青々とした芝生だった。晴れの日はキャッチボール、フットサル、マラソンのどれかを多数決で選ばされた。雨の日は別館の中でバレーボール、卓球、バドミントンのどれか。少女はいつも挙手せず他五人に、黙って付き合った。時々誰かが「筋トレ」という時だけ少女は励み、休憩時間に会話もした。


 職業訓練は午後二時から夕食まで行われた。いくつか項目があり周期で変更された。少女は新聞の折りこみ作業を好んだ。毎日百枚以上、夕刊にチラシを挟んでいく。ときどき雑誌の梱包もした。


 夕食も朝食、昼食時と大してかわらなかった。食堂でテーブルに並んで食べ、誰かが騒ぎ、連れ出された。

 

 その後は施設内の掃除、風呂、歯磨き。

 

 午後八時に、けたたましいベルによって作業を強制的に終了された。皆、監視員に手を縛られて房に戻された。


 少女だけ独房だった。


 監視員から日記帳と鉛筆、二冊の本を渡された。独房の壁には鉄格子のついた少女の顔ほどの窓が、三メートル上にあった。その下に小さな机があった。監視員立ち合いの元、机に日記帳と二冊の本を置き、まず正座して日記を書いた。済ませると畳に布団を広げる。消灯時間は午後九時だった。残る時間を読書に費やした。


 一冊目を読み終わると巻末にあるカードに自分の収容者番号、借りた日、返す日を書く。借りた本のカードにはいつも315という少女の番号が最初だった。すぐに二冊目にかかる。いつも二冊目の中盤でベルが鳴り、続きは明日になる。カードにその旨を書き監視員に渡す。

 

 日記帳、鉛筆、二冊の本を監視員に渡してから、今日もありがとうございました、と礼を述べる。それは収容されている他の者らも同じだった。

 ただその後、少女の場合は扉に、四つもの錠が掛けられた。

 

 少女は布団にもぐって眠った。


 二年間、ほぼ同じことを繰り返した。


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