真実
帰宅して、存分にシャワーを浴びたあと、私は自室でスマホを弄んでいた。
どうしよう、話す?
相手はもちろん瑠依。
だけど……。心配かけたくない、とか。どうせ明日には伝わる話だし、とか。
自分に素直になれない私が、色々と理由をつけてくる。
「話したいんだったら話せばいい」
本心を声に出すと、素直じゃない私は黙った。
大きく息を吸ってから、通話開始。
「もしもし」
「どうしたの? 春香から電話って何年振り?」
「一か月ぶり」
こんなこと、瑠依はちゃんとわかってる。
これは優しさだ。たった一言発しただけなのに、私が暗いことに気づくなんて。
狡いよね。私は少ししか分からないのに。君だって嘘つきだから。
もしかしたら私の心だって知ってるのかもよ。
だとしたら性格悪すぎ。
「何かあったの?」
限りなく優しい声が、相野春香を心配してくれている。
それだけで―泣きそうだ。
「さっきまでね、警察署にいたんだ。痴漢で。自業自得ってやつ? 馬鹿だよね、私……」
どうしてだろう。こんなに安心して、こんなに喉のあたりが熱くなるのは。
「痴漢!? 何された!?」
「安心して。交番あったから。犯人も捕まる」
「今すぐ家出られる?」
私の話聞こえてたか……?
そのくらい慌てた声。切羽詰まってる。
「うん」
「あの公園にきて。大通り選んできてよ?」
「さすがに学習した。分かってるよ」
心配性だなぁ、瑠依は。なんて言えるはずもない。資格もない。
「待ってる。気をつけて」
「うん」
下に降りて、明日の準備をしているお母さんにに声をかける。
「会いたいから、行ってきていい?」
「遅くならないようにね。……瑠依はそんなことしないか」
言わなくても伝わる。それがお母さんと私の距離。
「行ってくるね」
お母さんは何もかもを知っている顔で笑った。
「青春ね」
言い返せない私は、パッとリビングから退散するしかない。
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