⑥
※
「…………」
意識が、戻ってくる。夢を見ていたような気がする。実際は、そんなに時間は経っていない筈だが。なんとなくふらつく視界は、酸素不足のせいか。大きく息を吸い込めば、埃っぽい空気が肺を膨らませる。
改めて、辺りを見回す。逃げ場は、やはり無い。くすんだ灰色のコンテナは、自分一人くらいならば入り込んで隠れることは出来そうだが。少し威力のある銃で撃たれたら終わりだ。
「ふうん……ナルホドねぇ。ん、何だコレ?」
ふと、自分が何かを担いでいることに気が付いた。かなり重いそれは、奇怪な形状をしているが。どうやら銃、それも軽機関銃のようだ。
こんな形の銃は、初めて見た。
「ヘンな形……でもコレ、超カッコイイな! お兄サマは本当に良い趣味してるぜ。えーっと、どれどれ……安全装置は、コレか。マガジンは……一個だけか」
なる程、確かに絶望的だ。だが、白旗を振るには早過ぎる。辺りを歩き回りながら、策を練る。ふと、目についたのは古びた看板だ。一体何が書いてあったのか、色あせてしまっていてよくわからない。
その看板の左下から飛び出た、一本の釘。今にも外れてしまいそうなそれを、試しに引っ張ってみる。割と簡単に抜けたそれは、錆びついてはいるがまだ使えそうだ。
「……良いじゃん、コレ」
策は、出来た。空いている方の手で、ポケットの中に居る蝙蝠を掴んで取り出してみる。
異変に気がついたのか、今まで大人しかった蝙蝠が急にジタバタと暴れ出した。だが、そんな抵抗など無意味だ。
「ククッ、気が付いたのか? オマエ、チビのくせに頭良いなー。でも残念でした、諦めろ。『俺』は、アイツみたいに優しくねぇんだよ」
ニヤリと、口角を吊り上げて。ぎらりと輝く釘の先を見つめながら、蝙蝠を捕らえる手に力を込めた。
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