第2話 過去と未来
どうやら穴は別の時代へと繋がっているらしい。守はみち子と別れた後、自宅へと帰ろうと試みたものの本来そこにあるはずの我が家には「道重」の表札はあるが木造建築の一軒家がひっそりと建っていた。我が家はコンクリート建設のはずだ、これは一体どういうことなのかと思案した結果、あの穴が原因だと思い至り、穴へと戻り再び入り一休みした後外へと出るとさっきまでは聞こえてこなかった車やバイクといった機械音が耳に届いた。
穴の仕組みは解らないが守のいる時代とみち子のいる時代を繋いでいるらしい。
往来する方法が解ればこの穴はかなり便利である。
それから守は毎日みち子に会いに行った。
「本当なの?」
「本当だよ。信じられないならみち子が俺の世界に来ればいいよ。穴から行き来できるから」
「わかった。今度試してみるよ」
八月に入って早くも七日が過ぎ去った。
この調子でいけばあっという間に夏休みが終わってしまう。
今日は八月八日彼女に出会ってまだ七日しか経っていない。毎日が楽しく一日がとても速く感じられる。それ以上に彼女―みち子と過ごした日々は凝縮された大切な時間であった。しかし、今日の彼女は少しおかしかった。心ここに非ずといった様子で笑顔は見せているもののどこか哀愁を漂わせていた。
「みち子、どうした。何かあったのか?」
「別に何もないよ。どうして?」
「いや何かいつもと違う感じがしたからさ」
「何それ。何の説明にもなってないよ」
そう言って笑うみち子の表情はどこか冴えない。
それでも彼女が何もないと言うのだから今はそれでいい。いつか話してくれる時が来るのを気長に待つとしよう。
「まあいいや、それより俺の来た世界にはもう来たか?」
「ううん。まだ行ってない」
「じゃあ、今から少しだけでも来いよ」
みち子の手を引き穴へと入る。
しばらくして外に出てみるが何の変化もない。
あれ?
「一度に二人は行き来できないみたいね」
「何か嬉しそうだな」
「そんなことないよ。残念だけどまた次の機会に行くことにするね。じゃあ、またね」
「ああ、またな」
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