どっちの海でSHOW?

 ド田舎の三方が山と崖なので、場所を広げるには海を埋め立てるしかない。



 私の家は、以前は2階の窓から海が臨めた。サッシも車も家電製品も塩害で錆びまくり。




「ガシャーン!!」




 トンビが窓に気付かずに突っ込んでくる。ビックリしてジタバタされましても困ります…。



 夏は海パン足ひれ装備で家を出る。ペンギンの如くペタペタ歩いて着水できる距離。

 又は家にも帰らずランドセルと帽子と制服を脱いで港に置きそのままダイブ。親は私が帰って来ないから探し回ってた。



 サザエや鮑、イカなどを獲っては近所の加工場に売って小遣い稼ぎ。(※今は密漁になるので良い子は真似しないでね)


 泳いでずぶ濡れで帰る。

 勝手口から脱衣所までの道を、赤絨毯ではなく家中からかき集めた足拭きマットロードでお出迎え。何故かちょっと偉くなった気分でその上を歩いて風呂へ。




 それらも全て、埋め立てるまでのこと。

 一度埋め立てた海は、二度と元には戻らない。もう泳ぎたくない。


 新しい、広く平らな土地は大人気ですぐに売り切れる。出来た駐車場に、住人や観光客がこぞって車を停める。路駐が減る。公園が生まれる。子供達が安全に遊べる場所が増える。



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