第93話
「これはどういうだあ?!」
うるさい声が鳴り響く。壁がせっかく壊さないようにしていたのに結局ヘファスの工房がボロボロだ。
あとでヘファスに何か言われても、決して俺がやったわけじゃないと言って。
ガラガラガッシャーン!!
「お?」
「ぐあ・・・」
俺の横を前から降ってきた何かが転がり、うめき声をあげている。
その正体は
「うっわ。ヘファス大丈夫か」
「・・・お前やっぱり全然無事じゃねえか・・・」
そこに転がってきたのは満身創痍のヘファス。
あきらかに俺の無事を嬉しがっているような言葉ではない。解せぬ。
お、でもおかげでいいものが見れたわ。
「おー!それが魔槌か!!」
雷ほとばしる大槌。やっぱり魔槌ということだけあってやっぱりかっこいいな。
俺もほしい。
「なあ、それ誰にもらったんだよ」
「・・・ちっ。持っているのがばれちまった」
「なあなあ、どこ行ったら会える?」
「・・・ちっ。隠しきれないと思ったが、こんなに早くバレるとは・・・」
「おいこら、聞いてんのか。てか、今2回舌打ちしたな」
「そんなことより悪いな、こっちにあれ呼んでしまった」
「おい、スルーか」
ずいぶん俺に対する扱いが雑になったな、おい。
あれをつれてきてしまったことよりそのことを悪く思えヨ。
そんなことお構いないかの如く、もう一度魔槌を握りしめ立ち上がるヘファス。
そして、剣鬼とユアの方を見ると少し驚いたような顔をした。
「お前が無事だってことが分かったからこっちはもう終わっていると思ったんだが、まだ終わらせてないんだな」
「お前俺のことなんだと思ってんだ」
「あ?そりゃあ・・・やっぱいうのやめとくわ」
ヘファスはなにか言いたげな様子だったが、何か思いついたように嫌そうな顔をする。
なんか「・・・絶対口に出したらこいつの目の前にひょっこり出てきそうだ・・・」
とかぼそぼそと言っている。
何だってんだ、いったい。
っと楽しく談笑?している場合じゃないな。
俺は少しヘファスから離れる。
なぜなら、巨大な剣が俺とヘファスの間を飛んできていたから。
今の位置にいたら確実に大剣に当たっていただろう。
目の前に来た剣にかなり驚いているヘファス。
「おいおい!俺の質問をスルーしてんじゃねえよ!!」
「・・・おい、ヘファス」
「・・・なんだ・・・」
「あいつほとんど無傷じゃねえか、一応お前も強いんじゃねえの」
「気づいてなかったのかよ・・・俺はどちらかといえばサポート役なんだよ、察しろ」
「と言ってもその魔槌、聖槌だろ。というかジークが一緒じゃなかったのかよ」
俺がヘファスを見るが、俺と目を合わせないように別の方向を見るヘファス。
そして、少し困ったようにつぶやく。
「最近戦闘していなかったせいもあるのか、動きがいまいちでな。それと同じようにジークは剣聖のスキルがなくなった影響なのか身体が思うように動かないらしくてな。途中まではゴウガも本気を出してきてなかったからどうにかなってたんだが本気を出したあいつだと引き留めるのが精一杯だったよ」
「なるほどな。じゃあ、ジークは動けないのか」
「いや、俺と一緒に吹き飛ばされた時に少し力を逸らしてこっちにくるほど吹っ飛ばされてないみたいだな。もう少ししたら来るだろう。なぜかかなり静かに怒っていたからな」
「・・・へえ」
さすが、セリスの師匠ってとこだな。
まあ、俺も一応師匠なんだが、しっくりこないから置いておいて。
「おい!クソガキ聞いてんのか!!」
「・・・聞いてるよ。もうちょっと待ってろよ」
「ああ?!」
機嫌があきらかに悪い様子の剣鬼。
その理由は明確だった。
「なぜかイフリートとレイナの気配は消えるわ、挙句の果てにはミアはボロボロ・・・これはいったいどういうことなんだよおおおおおお!!!!!!」
「ぐうう!!!」
うめき声をあげるヘファス。
今のは威圧系のスキルか。まったく俺には効かないけどな。
それでも吠え続ける剣鬼。
「聞いてんのか、クソガキ!」
「おいおい、最強の一角とか言われている剣鬼様がそんなに興奮してるなんてどうしたんだ?」
俺は少し挑発するように剣鬼に喋りかける。
「ああ?!全部てめえのせいだろうが!!」
その挑発に簡単にのってくる剣鬼は巨大な魔剣を俺に向かって横に振り回す。
「ん?なんでだ??」
その大剣をよけながら、あえて不思議そうな顔をして剣鬼に俺はそう言う。
「てめえが俺たちに大人しくついてくればこんなことになってねえだろ!!」
「おいおい、ずいぶんな物言いだな。そりゃ、行きなくないなら抵抗するに決まってんだろ」
「いいからレイナの居場所を教えろ!!」
・・・完全に切れてるな。
剣聖と違って、本当に本能に従って動いている感じだ。
ヘファスの工房はおかげで原型をとどめていない。
下に埋まっていたヘファスの弟子たちはどうやらうまくこの場から離れたようだ。
しかし、なんかなあ・・・自分たちが同じようなことをやろうとしたって自覚はないのだろうか。
なんというか俺に突っかかってくる奴に限ってろくな奴がいない気がする。
この世界どうなってんだ本当に。
今度アストレアに連絡とらせて文句言わせてもらうか。
それに奥さんが大切なのはわかるが、娘の方がボロボロになっていることに対しての怒りはないのかね。
そんなことを思いながらも、まあ、別に隠す必要もないし、どこにいるかは教えようかなと思う。
「ここだよ」
「あ?」
そういって俺は自分の右隣の空間をゆがませる。
そして、ゆっくりと何かを引き出すかのように手を動かした。
「レイナ!!」
「あなた!!」
その空間から出てきたのは透明な空間に包まれて俺特製の魔力の鎖を体に巻かれている緑色の髪をした見た目からして魔女っぽい女。
そうこの女こそレイナという剣鬼の奥さんだ。
職業は魔法を使っていたことである程度のカテゴリーは察していたが、魔女というものだった。
鑑定改でも確認したが、魔導までは取得していないものの様々な魔法を使える魔法使いでは強い部類に入るステータス。
少し邪魔だし、うるさかったので異空間に閉じ込めておいた。
といっても空気はあるし、その中で死にそうになることはない。
「時間操作に異空間作成・・・もう本当に何でもありだな・・・まだ驚かされそうで怖いわ」
なんかヘファスが少し諦めたようにこっちをみてくる。
なんだよ、これくらいなら魔導使えるようになったやつとか、空間魔法使うような奴なら思いつくだろ。
ちなみにこれを使って
あいつあっさり入ってきやがった。
完全に気配遮断、完全に外と隔絶のこれなら大丈夫だろって思ったやつだったに、「お邪魔しまーす」だぜ?まじやってらんねえよ。
しかも反撃してもスキルの影響なのか、元からなのかわからんが気絶なかなかしないから眠らせるしかねえんだよな・・・
あの変態・・・普通にしてれば大人しいし献身的だから嬉しいのになあ・・・
残念さが際立つわ。
っとまた話がそれたな。
とまあ、「私を誰だと思っているの!!」「少し有名になったからって
さすがに口ふさぐと絵面的によろしくないからそうしたのだが・・・
「あなた!!!」
「レイナ!!今助けるぞ!!!」
なんか囚われのヒロインと主人公みたくなってんだが。
・・・なんで結局俺の方が悪人っぽくなってんだよ。
というかレイナの方も娘の様子を気にしないのかよ・・・
「ハルオミ!!お前がこんな外道だとはな!!」
「誰が外道だ」
人聞きの悪い・・・俺は毎回自分が納得いくように動いてんだよ。
悔いが残らないように。
もう前の世界みたいに理不尽に苦しめられている奴を見過ごしたりやり残したことがあったりなんてもうしたくないんだよ。
さてと、どうすっか。
せっかくだからしっかりと親に気付いてもらう必要があるかな。
そう思ってミアの方に向こうとした俺だったが。
バシン!
・・・は?
今の何の音だ。少しレイナの方を向いていた瞬間その音は聞こえた。
その音の方向は、
「ミア、お前は何をやっている」
「・・・」
ミアと剣鬼の方からだった。
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