第92話
「まったく・・・そい!」
ガン!
俺が剣をミアの魔剣にぶつける。
ミアは俺の剣を受け止めることで少し余裕が出てきた感じだ。
ちゃんと自分の剣が届くと思ったんだろうな。
だが、自分の、魔剣の力を過信しすぎだ。
「よい」
「な・・・!」
俺は力を抜いて左に受け流す。
あの魔剣の効果はよく知らんが、さっきのタウの記憶とアストレアの感じから見ると耐衝撃、ダメージ無効ってとこか。
それにタウの斧でも刃こぼれなしってことも考えてみると不壊属性も入っている魔剣か。
要するに絶対に壊れない魔剣ってところだろうな。
てことは物理攻撃は効かないな。
だから、アストレアはドレイン系の魔法を使ったんだろう。
今度俺もそういう魔剣作ってみるか。
もっとチート級で。
だが、今回はあえてその魔剣が絶対ではないことを証明してやろうではないか。
そこからは俺の独壇場だった。
「な・・・んで?」
「だから、話している暇があるのか?」
俺はミアの剣をどんどん受け流す。
「なんで押し負けない・・・それになぜただの鉄の剣が折れない?!」
なるほどな、今までは自分のスキルとその魔剣で敵の武器を粉砕してたのか。
物理攻撃無効な上破壊できない・・・要するに力押しでどんなに硬くても破壊できたってわけだ。
でも、そんなむやみに振り回したら、勝てない剣士もいることを痛感してもらおう。
「なんで!」
「だから、単調なんだって」
「この!この!」
少し刃こぼれをしながら、受け流す。
やっぱりいろんな人に会うのはいいことだな。
「おまえさん、侍って職業知っているか」
「話しかけるとは余裕ね」
おっとさっきのお返しか?
「いいから答えろよ。余裕ないのバレバレだぜ」
「う・・・」
俺に口で勝てるなんて思うなよ?
「・・・東の国にいるといわれている刀って剣を使っている剣士で・・・しょう!」
カキン。
また、受け流す。
しかし、それを知っていてもスキルとしては知ってない。
「そうそう。今使っているのはその侍の一部が使っているスキルだよ」
「・・・ということはあなたは・・・侍?」
「うーん、そういうことではないんだが」
「からかわないで!」
あらら、頭に血がのぼってんな。
セリスよりも若いな。
見た目通りってところか。
まあ、いいや。核心をついてやろう。
「からかってないさ。むしろからかっているのはお前だろ?」
「・・・なんだと?」
お、くいついてきたな。
そして、俺はミアに向かって笑顔で言ってやった。
「お前勝つ気ないだろ」
「・・・私が勝とうとしていない?」
「ああ、その通りだよ」
「そんなことない」
それがあるんだよなあ。
侍のスキル・・・流刀で会話を続けながらミアの様子を見ていた。
「俺がどうしてそう思うか教えてやろうか」
「戯言を・・・!」
「おいおい、魔剣姫様がそんな言葉使っちゃっていいのか?」
「・・・鑑定持ち」
「ご明察。だから、お前さんが本気を出していないことがわかる」
「・・・!」
「一つ一つ言ったほうがいいか?」
「!!!」
おうおう、動揺してんな。
あきらかに攻撃が乱れてきている。
・・・こういう心のケアって師匠がするものなんじゃないか?
やっぱり一撃でのして元凶に送りつけようかなと思ったが、セリスに頼まれたのでやるしかないな。
「その1、今使っているのは身体強化と身体強化スキルしか使っていないだろ」
「!なんで・・・?」
「俺の鑑定は少し有能なんだよ」
さっき鑑定でみたのでピンときた。
はた目から見たら上昇率が大きいから勘違いするだろうが、俺は違う。
身体強化魔法で全体的に上がっているが、あくまで常時発動の剛力、堅牢、俊足だけ。
まあ、あきらかにセリスよりは年下の見た目で人間なのだからこのステータスは異常なのだが。
「こんの!」
「で、その2。さっきから攻撃に当たりにきてんだろ」
「!!」
「さっきからおかしいんだよ。フェイント代わりに反撃するフリするたびに攻撃がやむんだよ。それに攻撃ちゃんとしてこないせいで剣筋が雑になっているし」
「うるさい!」
ガキン!
よいしょ。ほら、また一段と乱れたよ。
「まあ、他にも色々あるんだけどな」
まったく・・・俺はただの一般人だぞ。なんて面倒に巻き込まれるんだ。
なんか念話で一般人?(笑)って言った変態女神はあとでお仕置きだ。
つか、いちいちこんなに離れていても心読むんじゃねえよ、駄女神。
「私は負ける気など!ない!」
変なことに気をとられている間にさらに鬼気迫る表情で魔剣を向けるミア。
「だったら、なんだよ」
「私は!もっと強くなる!!そして、私の・・・私の子どもがもっと・・・」
「嘘だな。なあ?お前はどうしたいんだ??」
「だから!私はお父さんの!」
「何度も言わせんな。俺はお前の意思を聞いてるんだ」
「!!!」
ずっと剣を受け流しながら俺は問う。
俺に問われ、見つめられているミアからは戦意が失われていくのを感じた。
そして、ミアは少し俺から離れ・・・ゆっくりと剣を降ろす。
その悲痛そうな顔が物語っているのはもうほぼ肯定ととっていいだろう。
あんなにタウを追い詰めたものの顔ではない。
そして俺は畳みかける。
「お前はどうしたい」
「・・・私は」
やっと思いつめた顔をしながらこちらの方を向き、口を開こうとした。
だが、
「おおおおおおおおおおおいいいいいいいい!!!!!!!これはどういうことだあああああ!!!!!!!」
せっかくの俺の説得を邪魔してくる
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