第53話

 少女は言葉を紡ぐ。絶対的に不利なこの状況で。

「私はこのまま・・・負けるわけにはいかないのです!」

「どうしてだ?」


「この姿でも剣聖と呼ばれても恥ずかしくないそんな私になりたいのです!だから!!」


 少女は叫ぶ。今までの自分に打ち勝つように。これからの未来のために。


 セリスの叫びとともにセリスの体は少しずつ動く。そして、

「クラッシュ!!!」

 パリン!

「・・・おお」

「クラッシュ!クラッシュ!!!クラッシュ!!!!クラッシュ!!!!!」

 パリンパリンパリンパリン!!!!!!

 すげえや。俺のクラッシュ見様見真似でここまでできるのかよ。

「ハアハア・・・クラッシュ!!」

 パリン。

『でかした!セリス!!』

「・・・ハルオミ殿」

「おう」

「次の一撃で私たちの全力をぶつけます」

『セリスあれは!!』

「・・・シルフィ。お願い」

『・・・わかった』

 セリスはまたシルフィードを背負い、こちらに剣を構える。明らかに疲弊しているがまだその目は死んでいない。なら、俺も全身全霊で受け止めてやる。

「いいぜ、こいよ、今度こそ本気で」

「はい!!!!シルフィ!!!!!!」

『うむ!セリス行くぞ!!

 我が眷属に力を与える!!


 精霊化スピリティア!!


 』

 そこには、シルフィ—ドと一体化したセリス。シルフィードの魔力を取り込んだ身体はさらに美しく成長をしている。体は精霊化というだけあって風のように見えるが、輪郭ははっきりと剣には輝きをもたらしている。


「魔剣アトリビュート。最大龍化」


 俺はほぼ全身を龍の装甲に。風を切るには魔力だ。俺はアトリビュートに魔力を注ぐ。


 そして、


「『はああああああああああああああ!!!!!!!!!!』」

「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 龍に近しものと精霊たちはぶつかった。


 パキン。


「『かは・・・・!!』」

 一閃の血しぶき。最初に倒れたのは、セリスたちだ。でも、


「・・・やるじゃん」


 剣が折れたのはこちらだった。


「・・・やっぱり出来損ないの剣より真に強いのは思いのこもった剣てことか」

 刀身が見事に折れるアトリビュート。剣として保てなくなったその刀身は見事に砕け散る。

 一瞬だった。

 ぶつかった剣は俺の身体の軌道から逸れたが、右腕は持ってかれた。だから、左腕で強引に振りぬいた。

 ああ・・・最近本当に俺は腕を持ってかれるんだろうか。

 ・・・もし、折れるのが早かったら、負けてたかもしれない。

 だから、倒れているセリスたちに向けて言う。


「お前らは十分剣聖にふさわしいぜ」

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