Second memory 94

= second memory 94 =


小さな画面から目が離せない。

いったいSHINは何を・・・。


『NoonのSingerのSHINは決して有名ではないわ。小さなピアノバーの1singerにすぎないんだから。でも知ってる人間もいる。

そしてNoonのsinger SHINの恋人が、同じくNoonで半年間だけ歌っていたCHERRYっていうsingerだっていうことも知ってる人は知っている。彼女は辞めてからもSHINのステージには来てたから、暗い中ではあるけど素顔も晒していた。

つまりSHINは同じ時期に、公になっているツー

っていうニューハーフの彼女と、存在はしたけど今はどこで何をしているかわからないCHERRYっていうsingerの彼女と付き合っていた相手が二人いたということになる。人間はそういうのに弱い。今はどこで何をしているかわからないとかね。三角関係くらいの妄想話ですめばまだいいけど、あっちの世界で勝手に膨らみだしたら手がつけられないだろうって。

SHINは言った。

『CHERRY探しが始まる』って。


あいつがとことんあんたを遠ざけようとしたのはそこ。あんたの顔とCHERRYって名前が一致するってやつは、あの界隈にはゴロゴロいるわよ。あなたの顔と大下朋はわからないでしょうけどね。一人だけわかるのはいるけど、まあそこは大丈夫だから。

もちろんこの話はSHINからオーナーにも届いている。オーナーがあんたを自分の側にも来させようとしなかったのは、そういう理由。

あんたがもう少し器用に動けるヤツなら、なんとかなったとは思うけど、とにかくバカがつくほど正直で無器用よね。人を疑うことも知らないし、そこ学ばないし。

病院で高木と会ったときによーくわかったわ。最も危険なのは、あんたのまっすぐさと素直さだってね。SHINはそれをわかっていたのよ。

まあ、そんなあんただからあいつがここまで惚れたんでしょうけどね。カバも私も、オーナーも。

とにかく、SHINや私やカバはもちろん、オーナーもママもJも、私たちの共通の思いは、あんたとCHERRYを絶対に同一人物だと悟られないこと。誰にもね。

とりあえず、あんたを山根さんに預けたことで、当面は安心してられた。SHELLEYにも、Noonにもほとんど毎日胡散臭いのが来てたからね。

でも、SHINが一番恐れていた最後の展開が始まってしまった。

汗をかいている。もう、夜は涼しくなってきているのに。携帯を持つ手にも。

座ることも忘れている。部屋の真ん中で棒立ちのまま読み続けた。最後の展開?


『ネットの掲示板が動き始めた。そしてそこでゲームが始まっている。CHERRY探しがね。

パソコンを使って仕事をしていても、あんたは見たことないだろうけど結構えぐい部分もあるのよ。規制が緩い分、肖像権もないようなものだしね。

CHERRYが晒される。

既にあんたのチラシはネットの中に貼られているわ。あの写真って今思えばよかったけど、ほんとあんたってわからないのよ。ツーの靴下のおかげで胸もでかいし。あとcrazy nightの写真もあがってたわね。頭が緑でツーだかあんただかわからないのと、ベネチアンマスクしてピントボケてるから、まったくわからないのと。あとサインもあったわ。』

サイン・・crazy nightの日に1枚だけ書いた。

半年間でサインをしたのはあの1枚だけ。

普通の、普通の大学生の二人組。私のファンだって言ってくれた。あんなに楽しく歌ったのに。あんなに素敵なコーラスができたのに。サインと一緒に私まで晒し者にすることをなぜ選んだの?

私を見つけたかったから?

もう一度一緒に歌いたかったから?

・・そうであってくれたら、どんなにいいだろう。そうでなくても、あのサインの写真をUP するときに、ちょっとでもためらってくれましたように。

私のたった一枚のサイン。5年間も持っていてくれたんだから。

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