Second memory 93
= second memory 93 =
夏はとにかくメンバーで手分けしていろんな観光スポットを廻った。そこで楽しくないことを探す。それが私たちが取り組むべきこと。
「楽しくないことが無くなったところが、本当に楽しいところ。他の場所から学ぶ。まずはそこから。」
私の意見にみんなが賛同してくれた。嬉しいよ。
とは言っても、連日の外出にかなり疲れてきてはいる。部屋に帰ってシャワーを浴びたらとにかく眠りたかった。
毎日PC はチェックしているけれど、SHINからのメールはない。もちろん無言電話も。でも落ちこまない。
6月11日が特別だってことだ。彼の中でも。頑なに掛けているロックが外れてしまうほど特別だってこと。
少しでも嬉しい方に考える。それが勝手な思い込みでも。わからないことなら楽しくなれる方に考える。がんばれ、私。
そんな日々が繰り返されていた夏が終わりかけた頃、ゴリからの長い長いメールがきた。
『元気?随分待たせて悪かったわ。ちょっとバタバタしてる。あんたの質問に答えるわ。あんたももう25なんだから、冷静に考えられると思うし、ちょっと前みたいに走り出したりしないでしょ。まあ走ったところで海の向こうだけどね。
とにかく、あの時、真っ青な顔をしながらあいつはひたすらあんたを近づけるなって言った。自分にも部屋にも、店にも街にも。そして自分と付き合ってたのはツーってことにしてくれって。そう言って意識を失った。だから私たちは、あんたを遠ざけた。
手術が成功して、意識を取り戻したあいつは、私たちがしたことにそれでいいって言った。そして病院にも絶対に来さすなって。病院ぐらいって思わないでもなかったけど。
でも高木に会った時にわかったわ。SHINの言ったことが。あんたはほんとに・・。まあいいわ、それは。
意識が戻ってちょっとしてから、あいつは未来予想を聞かせた。私とカバに。
そしてここまで何もかもがSHINの予想どうりに動いている。
今、あんたはちょっとした有名人よ。あんたがって言うか、CHERRYがっていうか。まああんたがCHERRYなんだから、あんたがね。今、一部の人間たちがあんたを必死で探してる。あんたをって言うかCHERRYをね。
あのあと、酸素マスクをはずしたSHINが言ってたように書くわ。
事件はまずニューハーフタレントのツーと報道カメラマンの自分との痴情の縺れって話になる。なんらかの落とし所を世間は求めるし、アブノーマルとちょっと公ってところが好奇心をくすぐるから。その時点でツーのコカインの話はまだ出ない。
それは警察がマスコミに箝口令を強くから。
ツーは警察でひとつのこと以外は正直にすべてを話す。自分が誰からどうやってコカインを入手したかということも。警察はその情報から、売人と元締めを探す。そして客も。
恐らくたどりつく。そしたら箝口令は解除される。マスコミは客にいるだろう大物のコカイン使用関係の事件を取り上げる。普通の新聞やTV はそこ止まりだろう。でも週刊誌は突っこんでくる。そして自分たちの事件をもう一度、麻薬も絡めて書く。ニューハーフタレントと報道カメラマンの歪んだ愛憎と麻薬。格好のネタ。おもしろおかしく遊ばれる。
そこまではそれでいい。こっちの計画どうり。ややこしいのは、その後に来る波と、次の次に来るだろう波。
自分が持つもうひとつの顔、Noonでのsinger〈SHIN〉としての顔が見つけられること。恐らくスポーツ新聞や、ゴシップ誌に記事を書いているフリーの記者ほど、すぐにNoonのSHINを見つける。彼らの嗅覚はすごいから。』
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