Second memory 54

= second memory 54 =


SHINがモンゴルに出発して少しした頃、ついにお父さんが折れた。お兄ちゃんの結婚が認められた。最後はやっぱりお母さんだった。

お兄ちゃんに聞いた話では

『名前がどうということよりも、心の関係が気まずくなる方が辛い。実家の名前は父母の代でなくなるけれど、私の両親は幸せだと思う。』

ってなことをお父さんに言ったらしい、お兄ちゃんの前で。

私もまずお母さんだな。バカ孝はもういい。

久しぶりに会ったお兄ちゃんはなんか優しい顔に戻ってる気がした。

SHINにあんなに失礼な態度をとったことを思い出して、ちょっと腹がたった。

『ほんでおまえらはちゃんと別れたんか?』

って言うから、コップの水かけてやろうかと思ったよ。言いたくなかったけど、SHINがモンゴルに行っていることを告げると

『結局、辞めへんやないか。』

と言った。

「でも前とちょっと違うでしょ。SHINなりに考えてくれてるんだよ。」

確認してないけど、それもあるとは思いたい。

お兄ちゃんはため息をひとつついてから話を変えた。

『俺は結婚して婿養子になる。その関係でお前に確認しときたいねんけど・・なんかまずいこととかないよな?お前のことやから絶対ないと思うけど。』

「まずいことって何?」

お兄ちゃんは言いにくそうに言った。

『俺はもちろん、家族の素行調査が入る。』

はあ?なにそれ?さんざんうちの家族を不愉快な状態にした上に素行調査?

『政治家の家やから、しょうがないんや。』

会う前から、お兄ちゃんの彼女がちょっと嫌いになったよ、悪いけど。

私とSHIN のことにもう口出ししないで。

お兄ちゃんは彼女だけ守ってればいいじゃない。


〈SHELLEY〉でゴリにお兄ちゃんの話をした。怒って。

『まあしょうがないわよ。そういう世界だし。孝、誰になるの?苗字。』

お兄ちゃんの彼女の苗字を聞いて、ゴリは新聞をおろして、カバは梅昆布茶を出す手を止めた。

最近、カバは昆布茶にはまっている。

『そりゃあ、慎重になるし、養子しかないわ。』

って、ゴリ。

「何?有名人?」

『有名人っていうか、代々続いている政治家一家のお嬢様との御結婚よ。cherryもちゃんと調べておきなさい。』

カバの言い方が先生みたいだった。

どんな偉い一族か知らないけど、失礼なことは失礼だ。

『しばらくここにも来ない方がいいかもしれないわね。』

ゴリの言葉に立ち上がって言った。

『なんで?』

大きな声になってしまった。カバが頭を撫でてくれながら言った。

『しばらく我慢しましょ。お兄さんの幸せのために。』

SHINはいないし、ゴリやカバにも会えないなんて嫌だ!孝、バカ!


結婚が決まったと言っても、まだだいぶ先の話らしい。今ごろ素行調査してるんでしょ?

今だって私の後から誰かついて来てるのかもね。SHINはいないし、〈SHELLEY〉にも行けないから家と会社の往復ですとも。

ただ時々ゴリが会いに来てくれた。藪さんで。

佐々田部長と3人だったけど、一回は真鍋さんも一緒に4人で食事に行った。

そして一回は佐々田部長と三人で〈SHELLEY〉へ。カバに会えて嬉しかった。

ゴリから聞いた話では、瀧元オーナーのところに、私のアルバイトについての確認が入ったらしい。

事務を手伝ってもらっていたと伝えてあるから、話をあわすようにって。そんなとこまで。

お兄ちゃんはかなりめんどくさい世界に入っていくんだね。可哀想に。

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