Second memory 46
= second memory 46 =
入院したことによって、一人暮らしができなくなったことを告げたら、SHINはほっとしたように見えた。本当にほっとしたんだと思う。自分がいない間、私が一人でいることを心配してくれていたんだろう。
学生時代のような生活になっている。
一緒に住むことは許してもらえてないし、SHINの口から結婚って話は出ないし。
帰ってからSHINはとても忙しい。
国内だけでなく海外に呼ばれて行くこともあった。取材だったりシンポジウムだったり。彼がと言うより彼のチームがだから、無口な彼は多分端っこの方で座っている気がする。それなら行かなくてもいいんじゃないのかなあ。でも4ヵ国語を話せるSHIN は、通訳としても求められているんだろう。
『人前で話すのは得意じゃない。だから写真を撮るし、歌を歌う。』
と言っていたことを思い出す。
SHINが帰って来たことを知ったお兄ちゃんは、早く会わせろとばっかり言ってる。自分だって忙しいし、SHINも本当に忙しいのに逃げてるみたいに言う。そんな人じゃないって喧嘩になる。
お兄ちゃんもイライラしている。私もしている。
自分のイライラに気づいて、SHINの忙しさを理解してるふりをしているだけなのかもしれないと思ったりもする。
でも、心のどこかに、SHINが忙しいことにほっとしている自分もいる。
まだ話せていない。このまま話したくない気持ちが私の中にある。
何を怖がっているのだろう。SHINはきっと怒らない。きっと一緒に悲しんでくれる。そう思って何度か言おうとするのに、その度に体調がおかしくなる。明日にしようと思ったら治まる。そしてそんな自分が嫌になる。
SHINの腕の中で、幸せの先端に到達しようとするときでさえ、頭の中の記憶の点から振動となって、懺悔の感覚が体を包む。
自分が幸せを感じれば感じるだけ、浅はかなうえ、鈍感だった自分を悔いる。
ずっとそんな日が続いている。罪悪感を纏い続けている。
早くSHINにきちんと打ち明けて、謝らなくてはいけない。わかっている。でももう少し彼が落ち着くまでと先に延ばしているのは、自分が逃げているだけ。
怖がっているものの正体も、本当は少しわかっているのかもしれない。だから余計に、どう伝えればいいのか。
浅はかさを悔いる。
あの時にちゃんと話せばよかったんだ。大切なことを勝手に決めずに。SHINにはSHINの考えがあったはずだから。そうしなかったことへの後悔なんだと思う。
きっと彼は許してくれる。そして自分を責めるだろう。それも嫌だった。
いつもならきっとカバに相談してる。でもこのことはできない。誰にもできない。
私はいったい、いつちゃんとSHINに話すんだろう。いつ走れるようになるんだろう。
私はいつ私を許すんだろう。
SHINが帰ってから1か月後に、ようやく〈SHELLEY〉で帰還パーティをしてもらえることになった。
ママは早くしたいと言ってたのに、なかなかSHINの予定があわなかったから。
もうダウンを着る季節。そしてもうすぐX'mas。
街中にX'massongが溢れている。
今年のX'masもSHINは〈Noon〉で歌う。
まだちゃんと復帰してないけど、〈Noon〉の1年のラストはSHINの(Happy X'mas)って決まってるから。
あれから1年が経つ。私は去年の私より、強くなれているのかな。
雪がちらついてきた。手袋をしてないSHINに左手の手袋を渡す。手袋をしていない手を繋いだ。SHINがその手を自分のダウンのポケットに入れる。
SHINのポケットの中で、指を絡めて手を繋いで〈SHELLEY〉に向かった。
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