Second memory 47

= second memory 47 =


〈SHELLEY〉にはみんな来てくれていた。

〈Noon 〉の田中さんも来ていた。久しぶりだ。みんながSHINの髭を見て笑った。やっぱり似合わないよね。

SHINが帰ってきてすぐに、二人でゴリとカバには会いに来ている。Rudrakshaを持って。

SHINは私の本物のRudrakshaを首からかけて、箱に入ったのをゴリに返した。

何も言わずに深く頭を下げた。その様子を見て、SHINはやっぱりわかってたんだと思った。ゴリは

『さすがに効果テキメンだったでしょ!』

って笑った。SHINの首からぶら下がっている方を見て、

『それはcherryがかけとけばよかったのよ。クマにかけてないで。』

ってまた笑った。

その時もその話題にちゃんと笑えなかった。


『cherry!いいの?SHINとゴリがPair  Rudrakshaしてるわよ!』

パンって背中を叩かれてちょっと嬉しい気持ちで振り返った。ツーちゃんかと思った。

でもそこにいたのはショウちゃんだった。ツーちゃんがいなくなった今、ショウちゃんが〈SHELLEY 〉で一番若い。確か私と同い歳。

ツーちゃんのTV は何回か見た。深夜の番組の雛壇で、何人かの人と並んで座っていた。

相変わらず一番かわいかったけど、ギャーギャー言う人にばかりカメラが向いてしまってあんまり映らなかった。

そうこうするうちに入院騒ぎとかで見れなくなった。退院して家に帰ってからは、深夜にTVは見れなかった。一人暮らしの部屋から引っ越して、小さいTVを自分の部屋に持ってきてから、同じ番組を一度見たけどツーちゃんはいなかった。どうしてるんだろ、頑張ってるのかな。

ぼーっとそんなことを考えてたら、なんかSHINがステージに上がっている。みんなに言われて歌うみたい。マイクを通したSHINの歌を聞くのは久しぶりだ。うれしい。みんなから髭がレノンみたいだとか言われて、調子にのってるよね。私は好きじゃないのに。

彼は調子にのって(Woman)を歌った。

やっぱり素敵だと思う。調子にのってても、髭面でも歌っているSHIN が大好き。


ホームパーティみたいな帰還祝い。SHINはあちこちでいっぱい笑っている。ずっと彼の動きを目で追っていた。

『ほんとに良かったわね。』

近くにカバが来てくれる。今日のお料理はママとカバの共同製作だって。すごく美味しい。お寿司はとったの?って聞いたら、ママが握ったって。ママはお寿司屋さんで働いてたこともあるらしい。奥、深すぎ。


カバにいくつかの料理を教えてほしいと言ったら、厨房に連れて行ってくれた。カバと二人きりになったから、聞きたかったことを聞く。ふたつある。

「カバ、ツーちゃんどうしてるの?メールに返事がこないんだけど。』

まずひとつ目。

元気でいるよね?今、どんな仕事してるんだろう。カバはちょっとため息をついた?

『今、わかんなくなってるのよ。最初のタレント事務所は辞めたみたいなんだけど、その後、別の事務所に行ってそこからわからないの。ゴリたちが捜してるんだけどね。』

心配そうなカバの声のトーン。どうしてだろう。あんなに張り切ってたのに。

『あの子はやっぱり向いてないのよ、ああいう世界。淋しがり屋で、ああ見えて繊細で。それに何よりも、自分の性を隠したいタイプでしょ。』

「ツーちゃんは、女の子として見ても充分すぎるほどかわいいじゃない。最近TV に出てるアイドルより、ずっとずっと。雛壇でも断トツだったよ。」

私の言葉にカバは少しだけ笑った。

『かわいいだけじゃダメなのよ。きっと。』

カバの笑顔は辛そうだった。

ツーちゃんのことも心配だし、カバの辛そうな笑顔を見たら、もうひとつの相談はできなくなった。私のこと。

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