Second memory 26

= second memory 26 =


数時間前に出たばかりのSHINの部屋はいつもと違う。明るいうちからカーテンが閉まっているからだということに気がつくまで、少し時間がかかった。

私のPCはテーブルの上にある。すぐに電源を入れた。メールが一件。SHIN からだった。

『見えるよ。ありがとう。いってきます。』

おそらく、離陸前の短い時間で打ってくれたんだろう。ディスプレイの上の文字にそっと触れてみる。

DVDを入れて再生する。

〈Noon〉の控室。壁と懐かしいソファ。すぐにソファにSHINが座った。

SHINは座ってカメラを見るとちょっと息を吐いて話し出した。


『cherry、泣いてる?孝さんの言いつけを破って、泣かせてばかりでごめんね。でも僕の生き方をわかってくれてありがとう。がんばってくるね。

えーっと、あんまりこういうのは得意じゃないな・・。なんか遺書みたいになるのもいやだしな。そだね、出逢ったときのことを話そう。

J 'ai trouve une Cendrillonー君に初めて逢った日、ツーちゃんのヒールを履かせた時にそう思った。君のどうしたらいいかわからないみたいな困った顔が新鮮で、たまらなく愛おしく感じてしまった。その後も慣れないことで君が困れば困るほど、あの日はどんどん魅かれていったな。それと本当に楽しそうに歌う姿にも。Jも君の声のゆらぎを褒めていたけど、僕もシンガーCHERRYの声が大好きだ。それに歌ってるときと、それ以外のときのギャップがたまんなかった。だから素顔を見たときは嬉しかったな。

君はあのハンバーガー食べに行った日のことを偶然だと思っているかもしれないけど違うから。Jに練習が終わる時間を聞いてたから。あの時も楽しかったな。君がどんどん困ってくるのが。本当にすぐに表情に出るもんね、cherryは。

いろいろ心配させるたびに、君は僕の大好きな困った顔をして、それでも一生懸命に僕にぶつかってきてくれてる感じがしてたな。うれしかったよ。

・・母のことでは本当にありがとう。あんな風には考えたことなかったから、ずっと年下の君に教えられたと思った。

君は間違いなく僕のHalfmoonだと思う。僕の足りないところをいつも補ってくれる。何度、君に助けられただろうね。

cherryの表情は全部好きだよ。困った顔も、怒った顔も、パソコンに向かってる真剣な顔も、泣いてる顔も。でも一番好きなのは笑顔だから。だからcherry 、泣かないで笑っていて。僕がいない間も、笑っていて。君を抱きしめるために、君に「おかえりなさい」って言ってもらうために、僕は必ず帰るから。

今回は初めてちょっと行きたくないと思った。もっと一緒にいたかったから。でもそれはできないんだ。行くことが僕のRaisond'etre 存在理由だから。いつも一生懸命のcherryを見習って、僕もがんばってくるね。

そうだ、土曜の夜、(time after time )を歌ってくれてありがとう。J &CHERRY のあの歌を初めて聴いたとき、たまんなかった。大好きになったんだ。なんか僕らのまんまだよね。crazy nightのときに痛感した。君はいつも僕の前を走っていたから。

社会人になってからもそうだよね。すごいスピードで走っていく君は、どこに行くのかわかんないし、キラキラしてるし。歌詞のまんまだと思うよ。

また待たせるけど、stayではなくて笑顔で君の時間を生きながら待っていてください。必ず迎えに行くから。命ある限り必ず。

まだまだいっぱい言いたいことはあるけど、帰ったら話そう。もっともっと話そう。それまでとっておくよ。いってきます。愛してるよ。』

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