Second memory 13
= second memory 13 =
『いつ?』
SHINの出発の日が決まったことを言ったら、カバはほとんど反射的にそう言った。
「2週間後。でも2~3日ずれることもあるらしい。」
日本の飛行機でそんなの聞いたことないけど。
『・・どこなの?』
カバは今度はちょっと考えてから言った。
「行き先は教えてくれなかった。まだ待ってって。」
私の返事を聞いてカバは黙った。なにかあるの?日程がずれることと行き先の関係に?
『どのくらい行くの?』
ツーちゃんが私の隣にきて手を握ってくれる。
「2ヶ月くらいって。」
ツーちゃんはちょっと意外そうな顔をした。
『今回は短いね!』
ツーちゃんが私の両手を握り締めながら言った。そうなの?
『いつもは少なくとも3ヶ月は行くもんね?』
カバを振り返りながら言う。そうなんだ。よかった。
私が働き始めてもう2ヶ月が経っている。あっと言う間だった。このまま仕事が忙しければ、待ってる時間もあっと言う間かも。ポロッとそう言うとツーちゃんは、私の手をブンブン振り回しながら言った。
『そうだよ!すぐ経っちゃうよ。9月だったらまだ半袖の間に帰ってくるってことじゃない!ツーと遊んでる間だよお~。』
そうだよね。きっとすぐだよね。ツーちゃんに手を振り回されながら、ちょっと元気が出てきたよ。でもね、ツーちゃんは一生懸命はしゃいでくれてるみたいに見える。
SHINは午後に人に会うって言ってたから、今日は〈Noon 〉で会う。
SHINの部屋にいるか、自分の部屋に帰ろうかと思ったけど、一人になりたくなかった。
やっぱりここに来て良かった。
「ゴリは?」
『今日は、オーナーの仕事。』
カバは私の質問に短く答えた。
『cherry、あなた体調は大丈夫なの?なんかまた痩せたわね?』
いきなりだね。元気だよ、大丈夫。
朝はすごくショックだったけど、私、ちょっと強くなったんだ、きっと。
「ありがとう。大丈夫だよ。ちゃんと仕事しながら待ってるって決めたし。」
SHINのPCの中にあるのや、プリントした写真をいっぱい見せてもらってきたけど、全部子供たちの写真や普通の人たちの写真で、兵士の写真や戦闘現場の写真ってなかった。SHINもそんなに危ないとこには行かないって言ってた。
『実は怖がりなんだ。』
って。お兄ちゃんに会うのも、ほんとはちょっと怖いって。SHINが怖がりでよかった。
私の助手席で『助けてください!』って言ってたSHINの話をして、ツーちゃんと笑った。
でも時々、フラッシュバックみたいにSHINの背中の傷が目の前をよぎる。
SHINは今日のステージのあとしばらくsingerをお休みする。来週からは代わりの人が金曜日と土曜日に〈Noon 〉で歌うらしい。神戸のお店の人なのかな?
9月までSHINがマイクの前で歌うところは観れないんだなって思ったら、ちょっと淋しくなった。
SHINは(CANON)を弾いてくれた。そして(Tempest)。
第2ステージは(honesty)を歌ったあと(Say you love me)。
SHINが歌う(Say you love me)は初めて聴いた。
ねぇSHIN 、まるで私との思い出を辿ってくれてるみたいじゃない。
うれしいけど、どの曲に纏わるシーンも全部ちゃんと覚えてるし、あなたの歌を聴くと、とても鮮明に甦ってきてうれしいけど。・・やめて。
よくわからないけど、なぜかわからないけど、なんだかとても不安になるから。
聴きたいけど。やめて。
SHINは最後に(Imagin)を歌った。間奏の間に声に出さずに唇だけで『いってきます』って言ったの、わかった。
私、くずれそうだ。
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