Second memory 12
= second memory 12 =
数時間前まではいつもの金曜日だった。
〈Noon 〉の第2ステージに間に合ったから、SHINの歌を聴いて、SHINと二人で〈Noon〉から彼の部屋に帰り、いつものように愛しあった。
そして、いつものようにSHINの腕の中で眠った。
土曜の朝、目が覚めて、いつものように、SHINが起きる前にコンタクトをつけようと。
いつもは、そのタイミングでは、私の隣で寝息をたてているSHINがいない。
こんなことなかった。
一度、私が疲れはてて眠ってしまった4月のあの日以来。
カーテンから漏れる光だけを頼りに、見えにくい裸眼のままで洗面所に向かう。
SHINはパソコンの前に座っている。私が起きたことにも気づいていないみたい。
静かに洗面所に行って、顔を洗ってコンタクトをつける。
嫌な予感がしている。
鏡に映った私の表情は、すべてをわかっているように見えた。
「おはよう。」
なるべく、普通に言った。
SHINが振り返る。
その表情で、自分の不安が的中したであろうことを感じる。コンタクトをつけなければよかった。
『おはよう。』
SHINが少し微笑んでいう。
私は一歩づつゆっくりと彼に近づいた。
椅子に座っているSHINの膝に座る。
SHINの腕が私の背中にまわる。
そしてそのまま抱きしめてくれる。優しく。
SHINの肩に頬をのせて、彼の首に腕をまわした。
『cherry、出発の日が決まった・・』
SHINの腕に力が入った。強く抱きしめてくれる。
彼の顔は見えない。
私の顔も彼には見えていない。
でもきっと、彼の腕の中にいる私の全身から動揺が伝わっている。その証拠に彼は抱きしめる腕に力をこめた。
いずれその手を離さなければいけないのに。
何も言えない。
何を言えばいいのかわからない。
わかったことは、SHINがこの部屋を長く空ける日が、決まったってことだけ。
私の満たされた最高に幸せな時間が、あたりまえのように繰り返されていた時間が、変わってしまうということだけ。
私の大切な、もしかしたら自分自身より大切な人が、私のそばからいなくなるということだけ。
SHINは戦場に行く。
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