First memory 59

= memory 59 =


『どうだったの??』

ツーちゃんの聞き方は、学校で女子たちが話してる感じそのまま。

「どうって言われても・・・」

そんなの説明できないよ。

『だって、いきなりじゃない!ずっと片思いしてたくせに、ちゃんと手を繋ぐこともできなかったくせに、1日で付き合いだして最後までって!展開早すぎ!やっぱり、あのデュエットがよかったのかな?』

ツーちゃんが興奮している。

そうだ、まだちゃんと謝ってないよ、ツーちゃんには。

「ツーちゃん、スキヤキパーティ、せっかく誘ってくれたのにごめんね。」

『あぁもう!そんなのいいよ。優先順位でいったら、好きな人が先であたりまえなんだから。』

そう言って、ツーちゃんはやっと普通に笑ってくれた。

『でもさあ、cherry 大丈夫なの?ちょっと急展開すぎない?』

ツーちゃんの言葉はもっともだ。

「私もそうかなとは思うけど。大丈夫ってなにが?」

『いきなりそんなことになったら、征服欲達成しちゃってあきられるって言うわよ。』

「・・あきられる?・・」

それはイヤだ。でも・・・

『でしょー?だから、STEP踏まなきゃ。相手の様子を試しながら、適度にジラしたりさっ。』

適度にジラす・・・・。

『そうやって、コントロールしながら盛り上げていくんじゃない!』

ツーちゃんの話してることは昔、耳にしたことがある。高校時代の女友達の会話。私は端っこで聞いてるだけだったけど。

聞いてはいたけど共感することができなかった内容。

あきる・ジラす・・・・

(愛)とは対極にあるグループの言葉じゃないのかな?

そもそもsexしたからって、自分に飽きてしまう男性を愛することができるの?

コントロールって冷静じゃないとできないよね?

私はそうじゃなかった。

もう、SHINさん以外はなにも見えなかったし、SHINさんの声以外はなにも聞こえなかった。

「・・半身を求めてやまない・・」

ふいにまたその言葉がでてきた。

呟いていた。

『なに?それ?』

ツーちゃんの目が点になってる。

「・・なんかそんな感じだった。」

ツーちゃんのことは大好きだよ。

でも、やっぱりツーちゃんの言ってることは、私にはわからないんだ。ごめんね。

カバさんが呼んでる。ケーキ食べようって。

コーヒー入れてくれたんだ。


『わぁ!"angel"のケーキじゃない!あんときツーが食べれなかったから、cherry の奢り?』

ツーちゃんの話がまずい方向に行きそうに感じて、あわてて言った。

「SHINさんの奢りだよ。」

『そなんだ~。SHINごちそうさま~。でもなんでSHINの奢り?しかも"angel"?』

ゴリさんたち、ツーちゃんには言ってなかったんだ。ありがとです。

『ちゃっちゃと食べないならもらうわよ。』

ゴリさんのフォローにSHINさんが赤くなってる。ツーちゃんはあわててケーキを食べながら言った。

『cherryってまだ "SHINさん" って呼んでるの?みんな "SHIN" って呼ぶのに。ファンの女でも。』

ドキッとした。

昨日の黄色い声を思い出す。

『それもそうよね~、身体中にキスマークつける関係なんだからねぇ。』

カバさ~ん!!

『えー!なにそれー?カバなんで知ってるのー?ツーにも教えてー!』

カバさん・・・。あっ!って顔してもだめだよ。遅いよ。

『まっ、私たちのことも、いいわよ、「さん」ってつけなくて。あんたももう大人なんだし。年も身体も。敬語もいいわよ。深くは考えてなかったと思うけど、もう身内みたいなもんだし。SHINとこういう関係になったんだから尚更ねぇ。敬語って見えない壁かもしれないしね。』

ゴリさん、フォローなのか?

敬語って見えない壁なの?

私が建ててるの?

そんなつもりはまったくないけど。

年上の人だから自然に出ちゃうだけで、私はここにいる3人には、さらけだしてると思うけど。

・・違うか。

私が出してるのじゃなくて、みんなが気がついてくれてるんだ。

特にいっつもゴリさんが、エスパーみたいに見抜くんだ。

『SHINって呼んでみなよー!ここで!』

ツーちゃん、なぜここで?

SHINさんを見た。

赤面したままコーヒー飲んでる。

『SHINもその方が嬉しいでしょ~?』

『・・はい』

SHINさんはツーちゃんには逆らえませんって感じ。

でも私も、『ちゃん』がなくなったとき嬉しかったから。

「・・SHIN・・」

って小さい声で言った。それから

「ゴリ・・カバ・・」

『はぁい。』

カバさんがすごく笑いながら返事をしてくれた。

なんかあったかいものが心の中にフヮって広がった。

『でも、ツーのことはツーちゃんって言って!cherryにツーちゃんって呼ばれるの好きだから!SHIN も!』

ツーちゃん・・なんか・・全開だなぁ。

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