First memory 53
= memory 53 =
家にはそっと入った。
できれば誰とも顔をあわせたくなかった。手を洗ってうがいをしたら、そのまま部屋に上がった。
隣の部屋に灯りがついている。お兄ちゃんが帰ってきてるのかな?めずらしい。
コンタクトを外して、お風呂に行った。
浴槽に浸かりながら思う。
一昨日こうしてた時は、私は彼氏もいなかった。
誰かが自分の肌に触れることなんて、考えてもいなかった。
首から腕にかけてゆっくりと触れてみる。
あの人が触れた。
胸に触れてみる。
この胸に触れたのは、私とあの人だけ。
あっ、ツーちゃんもだった。ちょっと笑った。
しかし、昔、本で読んでいたのに比べて展開早くない?
段階を踏んでそうなるって書いてたけど。
どこでどっちがストップするのが普通なんだろ?女友達が聞いたら多分ひくんだろうなぁ、誰にも言わないけど。
もう一度、自分を抱きしめた。
年齢も体もおとなになった自分を。
階段を上がったら部屋の前にお兄ちゃんが立ってる。
「おかえり。どしたの?」
普通に聞いたら、いきなり腕をつかまれて、部屋に入れられた。お兄ちゃんも入ってくる。
『外泊したやろ?男か?』
恐い顔。髪をアップしてたから咄嗟に首筋を隠した。
『そんなもんつけられやがって。どこの誰や?』
「お兄ちゃんの知らない人やよ。いいやん二十歳なってんから。」
『アホか、まだ一週間やろ?ちゃんとしたヤツなんか?いつから付き合ってるねん?』
正直に話したら、絶対怒るから黙っていた。
お兄ちゃんはため息をひとつついて言った。
『おまえのことやから、いい加減な気持ちやないのはわかってるけど、相手はどうやねん?おまえは免疫なさすぎるから、簡単に騙されそうやからな。とにかく、お母さんやおばあちゃんに心配かけるな。』
頷いた。
お兄ちゃんのことは大好きだ。
子供の頃からずっとお兄ちゃんに守ってもらってきたのかもしれない。
小さい頃は転んで泣いても、淋しくて泣いても、必ずお兄ちゃんが慰めてくれてた。
私が滑り台から落ちたときは、私よりもお兄ちゃんがワンワン泣いてて、救命士さんが間違えたってお母さんに聞いたことがある。
いろんな相談にものってもらった。
今も私を心配してくれてるのがすごくわかる。だからポロっと言ってしまった。
「・・でも週末、行く。」
お兄ちゃんはまたため息をついた。そして何か袋を渡した。
『携帯電話、持ってへんやろ?学生の間は電話代は払ろたる。なんかあったら、すぐに電話してこい。俺のとこ泊まることにする時はメール入れとけ。』
「ありがと・・」
『誕生日プレゼントや。ほんでこれは相手に渡せ。ちゃんと渡せよ!俺からのプレゼントや。』
「毒?」
『アホか・・チョコや。・・お母さんが最近、朋がよう笑うし、なんか楽しそうやって言うてた。悪いヤツやないんやろ。』
お兄ちゃんは頭にポンと手を置いた。
『生徒の話聞いてたら怖いぞ、今の高校生。おまえの免疫あいつら以下やからなあ。自分大事にしろ。大事にしてもらえ。』
頷いた。
お兄ちゃんは部屋を出て行った。
なんとなく思うんだけど、ゴリさんはお兄ちゃんに似てるのかもしれない。
ルックスは全然違うけど、私に対する雰囲気が。
お兄ちゃんはもうすぐ26歳。
ゴリさんはいくつなんだろ?カバさんは?
SHINさんは?
携帯電話は私が大好きなネイビーブルー。
異様に分厚い説明書がついてる。
これ読むのか?
SHINさんに渡す方を降ってみる。
チョコ?なぜ?
今年のバレンタインデーは家族以外にチョコレートがあげれる。まだずっと先だけど。
そうありますように。
でも、その前に考えなきゃいけないことが山ほどあるぞ!
自分のことも。
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