First memory 52

= memory 52 =


あの時みたいだ!もう絶対だめ!

そう思って思いっきり口と目を閉じた。

ゴリさんが、ブラウスの襟を引っ張っぱる。

抵抗して両手で閉じようとした。

『カバー、クリームファンデーションの厚塗りのヤツ持ってた?』

そう言うと襟を放した。なに??

『怒ってるのかって思ってるんでしょ?怒ってるわよ。昨日来なかったことはいいのよ、別に。でも、あんた今日学校サボったでしょ?』

ばれてる。

『外泊することは、家に連絡したんでしょうね?』

頷いた。

『それなら、そこはいいわよ。でも学校サボってどうするの?デビューの日もちゃんと行ったのに。』

「ごめんなさい。」

『Noon で歌うことで、ここにくることで、私たちやSHINと過ごすことで、あなたの当たり前の日常を変えてはだめ!』

ゴリさんは強い口調で言った。

泣きそうになる。ごめんなさい。

ゴリさんはフーっと息をついた。

『まったく・・・。それとこれはcherry じゃなくて、SHINに言っておかないとね。首元から胸のあたり見てごらんなさい。』

なに?と思って胸を覗き込んでいたとき、カバさんが瓶に入ったファンデーションを持ってきた。

なに?・・・なんか虫にさされてる?

『ちょっと、ブラウス脱ぎなさい。』

えっ?ここで?でも二人とも目がマジだし、しょうがないからキャミソールになった。

『ああ~。まずいわねえ。肩紐のしかないしねえ。』

カバさんもため息をついた。

『まったく、SHINのバカが。』

ゴリさんが言いながら、背中にファンデーションを塗ってる?

『これならなんとかなるわね。』

背中もさされてるのか?SHINさんが悪い?

カバさんも一緒に髪を上げたりしてくる。

『首と胸もね。cherry ちょっと髪あげて持ちなさい。まったく腕もだわ。・・あのね、kissmarkってわかる?1週間は消えないわよ。あなた色白だし、若いからつきやすいのよ。』

『あんた衣裳2枚とも肩紐なんだから、胸から上はだめだからね。自分で見えない場所は塗れないでしょ?ファンデーション。』

あっ・・そういうこと知らなかったです。

はずかしいです。

キャミソールでファンデーションを塗ってもらっているということよりも、なんかいろいろ恥ずかしいです。

『まったく、どんだけしたのよ!ほんとSHINバカ!』

ゴリさんはまた言った。

『ちょっと、赤くなんないでよ!わかんなくなるでしょ!』


二人がかりで、SHIN さんが悪いkissマークを探してもらって、カバさんのファンデーションで隠してもらって、コンビニで下着を買って〈Noon 〉についた。

ボーッと店に入っていったら田中さんに

『どうかしたんですか?』

って言われた。

それだけでもなんか恥ずかしくなる。

歌えるのか?私。あのピアノの前で。


控室に入る前に田中さんが封筒をくれた。

ドアの下に入れてあったって。

"CHERRY様 "って書いてある。

中を開けると例の酔っぱらいのオジサンからだった。先週のお詫びの言葉が書いてある。

読んでいて泣きそうになった。


あの日は5年前に亡くなった奥さまの祥月命日だったらしい。

奥さまは中国の方で"夜来香"が大好きだったって。

二人でいるときは日本語で口ずさんでいたけど、時々、中国語で歌ってたからきっと望郷だろうって。

忙しさにかまけて、連れて行ってあげれなかったこと、今も後悔してるらしい。

私の着てたドレスが結婚式の奥さまのドレスに似てたんだって。

最後に私たちのデュエットを最高に幸せな時間だったって。また来てもいいかって。


きっと奥さまは許してくれてると思う。

そして奥さまが羨ましくなる。

亡くなってから5年経ってもずっと想って、気にかけてもらってるんだから。

Jさんに手紙を見せると

『ファン、2号やな。』

って。2号なの?じゃ、1号はだれ?

でも生まれて初めてもらったファンレターだよ!

そもそもファンレターって、ウソみたい!!

SHINさんに中国語の(夜来香)を教えてもらお。

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