First memory 15

= memory 15 =


『あれ?チェリーちゃん?』

予想どおりの声で、言われてちょっとピクッとした。

「こんにちは。先日はありがとうございました。」

頭を下げると、SHINさんも同じように丁寧に腰を折っておじぎをしてくれる。

『いえいえ、どういたしまして。楽しい時間をもらいました!』

顔をあげて笑ってくれたと思うけど、逆光でよくは見えていない。願望?

『練習終わったの?早いね。あっ金曜だから。』

SHINさんは自分で疑問を投げて瞬時に解決した。

『<SHELLEY>に行くの?』

いったいこの人たちは、私のスケジュールをどれほど共有しているのだろう?

ルーズソックスのことは知ってるのかな?・・・ゴリさんとのkissのことは?

もちろん聞けるはずはない。

「いえ、今日は行きません。」

行こうかと思ってたけど、SHINさんと一緒に行くことになったらイヤなのでやめた。

『そなんや。このあとの、予定は?』

「・・別に・・」

もう家に帰って、お兄ちゃんのCDを探索するだけ。

『じゃあ、ご飯付き合ってよ。』

いきなりです。

私の中で、ルーズソックスの件も、deepkissの件も、疑問が解決していないままだというのに、いきなり二人でご飯ですか?ってか、二人でですか?素直にたずねる。

「・・二人でですか?」

SHINさんは、ちょっと微笑みながら言う。

『イヤ?』

「そんなことないです!」

即答してしまった。

『じゃ、行こう!』

そういうと、降りかけた階段を一段抜かしで上がって行った。あわてて着いて行く。


ハンバーガー・・・。

fast foodがイヤなんじゃないよ。海老バーガーは大好きだし・・。でもハンバーガーは・・。どうやって食べろと?

そりゃいつもは、かぶりつきますよ。ほぼ数口で食べちゃいますよ。なんと言っても(fastfood)ですからね。

でも、SHINさんの前でできないよ。

ハンバーガーっておちょぼ口では食べにくいんだから。世の男子は知っておくべきだ!最初のデートで、ハンバーガーには行くなよ。女子を困らせるだけなんだぞ!いくらおいしくても!お金なくても!

でも、デートじゃないものね、ただご飯食べにきただけだもんね。

じゃあ、食べてよ。私が食べるの見てないで。ご飯を食べているところを見られるのって、本当にはずかしいよ。こんな気持ちは初めてだけど。おちょぼ口で食べるハンバーガーっておいしくないよ。

そんな私の気持ちは、絶対にわかっていないと思う。薄く微笑んで、肘をついて前でジンジャエールを飲んでいるSHINさんが、ちょっとにくらしくなる。

『お腹、空いてなかった?』

微笑んだまま言う。

空いてました。ペコペコでした。でも、胸はいっぱいです。だから見ないでください。食べてください、自分の。お願い。

やっぱり、ニコニコしている。でもちょっと目がイジワルっぽいんじゃない?ちょっと腹がたってきたときに、

『今日、ステージ見においでよ!このあと、7時からだから。ご飯食べたら、一緒に行こ!』

SHINさんは、そういうと自分の目の前にあったハンバーガー2個をあっと言う間に食べて、ポテトを注文しに行った。

今のうちに、海老バーガーを食べてしまわなければ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る