First memory 14

= memory 14 =


先日の私の大変身は、ツーちゃんの口から、ゴリさんとカバさんにも伝わっていて、『見たかった』の大合唱を受けた。

ツーちゃんに教えてもらったお化粧方法は、練習しているけれど、なかなかうまくいかない。

さくらんぼの枝も、もう缶詰のさくらんぼは見たくないです!ってくらいやったけど、たまーにひとつできるくらい。ちなみに、ゴリさんもカバさんもツーちゃんも、ママさんまでできる。<SHELLEY>の入店テストかも。


金曜の<Noon>での練習の時に、Jさんから先日の写真を見せられた。そこには、自分でも自分とは気づけないだろう私がいた。がちがちの直立姿勢のは、よく見たら私だけど。

歌っている写真から、何枚かを選んでJさんが言う。

『どれがええ?』

「おまかせします」

正直、直視するのが恥ずかしい。でも、写真を見ているとあのときのシンデレラ気分をちょっと思い出す。

SHINさんは、金曜と土曜に<Noon>で歌っている。ピアノの弾き語りらしい。SHIN さんの歌を聴いてみたいなぁと思う。

<Noon>は音楽が好きなオーナーが半分道楽で始めたお店らしい。でもオーナーには会ったことがないし、どんな人かも知らない。<SHELLEY>のママに似てるのかなあ。

「彩さんの歌を聞きにきてもいいですか?」

Jさんに聞くと、

『まだあかん』

と言われた。

『しばらく、他の人の歌や、ピアノは聴かんといてほしいなあ。ごちゃごちゃになったら困るしなあ。時間もあんまりないし。』

そうだ。時間ない。もっともっと練習しなければいけないし、歌も覚えないと。

この間の〈Say you love me〉もJさんはレパートリーに入れてくれた。それにしても少ない。

『とりあえず、あと5~6曲は入れといてもらわなあかんなあ。英語の歌も含めて。なんか歌いたい曲があったらあげといて。BEATLESとCARPENTERSは何曲かいけるねんなあ。』

半分自分に言いきかせているようにも聞こえる。

「Jさん、ステージってこの間みたいなドレス着るんですか?」

私の質問に『せやな』と答えた。

『彩のがあるけど、ちょっと体格が違いすぎるな。靴下だけではどうもならんやろ?』

知ってたんですね。やはり。

ツーちゃんのおしゃべり!ということは、ゴリさんもカバさんも・・SHINさんも知ってるよなあ。

ちょっと、恥ずかしくてステージ見に行けないなあ。

なんだか、元気がでなくなった。なんでだろ?

でも頑張って練習しなきゃ。時間ないんだから。

<Noon>での練習は、6時半には終わる。

金曜日はもうちょっと早い。

日曜日はお店がお休みだから、<SHELLEY>でカバさんが教えてくれる。

Jさんは、金曜の私の練習が終わったあと、月曜の朝まで毎週どこかに行くらしい。詳しいことは知らない。

考えてみたら、Jさんのフルネームも知らない。ゴリさんやカバさんの名前も、ツーちゃんの名前も。私のフルネームと電話番号はJさんだけが知っている。だけど、今ではみんな私の大切な人になっている。

最近、学校の友達とも遊んでいない。もちろん練習があるからだけど。友達たちは、鬼のようにバイトを入れてると思っているみたい。

不思議な場所に迷い込んでいるのかもしれない。

Alice in wonderland。彼女は現実の世界に戻りたかったのかな?

半地下になっている〈Noon 〉から出て、地上へ出る階段を上がろうとした時、誰かが降りてきた。

逆光で顔が見えないよ。でも、シルエットでわかってしまう。不思議。

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