君の知らない沖縄料理
雅島貢@107kg
あなたの街のコンテストみたいなやつ参加分
うまくて長生きまで出来る、夢の食事がそこにはあるんだぜ
沖縄のことを語る時、避けて通れないものがある。何かってえと米軍である。俺は政治に疎い人間であり、大体その知識の程度はメロスと同等、メロスと違うのは妹もセリヌンティウス的な友人もいないし長距離走るのとか怠いので、邪智暴虐の王に食ってかかった直後黙々と処刑されるところくらいのものである。だからほぼメロスと言ってもいい。
などと言う話をしていると、あっという間に二千字なんて到達してしまうので速やかに本題に入ると、米軍というのは色々と問題を抱えてはいるのであろうが、敢えてそれらに目を瞑り、「食」という観点だけをとらまえて見ると沖縄に新しい文化の風を吹き込んだと言って言えないことはない。とりわけ、いわゆるところのビフテキ、最近の言葉で言えばビーフ・ステイクである。
実は沖縄はわりと牛の産地で、有名どころでは「石垣牛」「宮古牛」などがあり、詳しいことは知らないけど多分潮風を浴び、オリオンビールなどを飲んで楽しく暮らしているせいであろう、うまい。機会があれば、「伊江牛」という、もう沖縄のどこにあるのかすら分からない地で育った牛はなかなかうまかった記憶があるので試されたい。
でまあそのように、沖縄にステーキ文化があるということを皆さんはご存知かと、まずジャブ的に問いたいわけである。諸君がいくら賢い文学の徒であっても、沖縄料理と言えばソーキ、ラフテー、ミミガーと言った豚的なもの、あるいはゴーヤ(チャンプルー)、陸ワカメなどの野菜類、海ぶどう、ミーバイと言った海産物でほぼ全てというイメージを持たれているのではと思うのだが、実はステーキもうまいのである。
が、しかし。
その程度のことで「君の知らない沖縄料理」などと宣うても、おそらくグルメな人には「知ってるわ」「なあにを今更」と謗られるだけであろう。俺だってそれくらいは知っている。
ここで豆腐餻と泡盛を組み合わせるとなんかスゴイ、みたいな話をしたって、「それもう美味しんぼでされてますけど」と言われるだけだし、あとぶっちゃけると俺は豆腐餻、言うほど好きではないので(たまーーーに食べたくなるので嫌いでもないが)、ここで無理に推すことはしない。
では何を推そうというのか?
説明してもいい。いいが、これを知った皆さんは、もう知る前の皆さんには戻れない。そして、もしも皆さんの近所に沖縄料理屋がなかったり、あっても多少なり顔見知りでない限りこの発注はできないので、皆さんの心は充たされない。それでもいい、とにかく僕は/私は知の探求者なのだから、という人だけ、以下を読まれたい。
覚悟はいいか?
よし、言おう。
答えは「麻婆豆腐」である。
いやいやいやいや待って待って待って。
俺だってこれが、中国は四川省の料理がオリジンだということくらい知っておる。知りながら敢えて言ってるのである。
麻婆豆腐とは、豆腐とひき肉などにネギ的な野菜を加え、なんとか醬とかで味をつけた辛い料理だが、別にここでジーマミー豆腐を使えとかそういうゲテモノめいたことを言おうとは思わない。
気をつけて欲しいことは二点。
1.ネギ的な野菜、のところに島らっきょを代入する。
2.辛味のとこに、コーレーグスをエンチャントする。
これだけ。あとは可能なら米を炊いてもらいましょう。
これがまーーーーうまい。「麻婆豆腐の麻は麻薬の麻」と言いたくなるくらいうまい。うまいんだほんとに。ちょっとマジで無言になるくらいうまい。
まあ元々麻婆豆腐という料理は完成度が高く、辛味、わずかな酸味、少し山椒みたいな痺れる感じ、しょっぱみを兼ね備えているが、さて皆さん、麻婆豆腐のテンプレの香りは? と言われて想起できるだろうか。少々難しいのではと思う。別に匂いのない食い物ではないしいい匂いなのだが、例えば帰ってきたらカレーの匂いがぷんとして、腹がグウとなる、あるいはニンニクを炒める香りがただよって絶頂に達するなど、そういう日常的な、「わーいい匂いの食べ物」というところにはなかなかカテゴライズされにくい匂いではあろう。
だから麻婆豆腐に何が足りないか、いや足りないものなど何もないので、「ぼくのかんがえたさいきょうのまーぼーどうふ」を実現するには何がいるか、って言うと「香り」要素なのである。島らっきょは、噛むと独特の、「あー山のなんか野菜ー!」という感じになる野菜で(語彙には目をつぶって欲しい)、コーレーグスってようするに唐辛子を泡盛に漬けたもので、泡盛とは結構香りの強い酒である。これが混ざると、光と闇が混ざって最強になるって感じがして、ほんとに今これを書いてる早朝6:30から麻婆豆腐が食いたくなるが、今や俺は凡百の中華料理屋の麻婆豆腐では「なんか違うんだよな〜」って感じになるまでになってしまっている。困ったもんだ。麻婆豆腐の麻は……。
そういうわけで有益なグルメ情報としては、札幌駅の南北どちらがわにも沖縄料理屋がある(どちらも少し歩く)。すすきのあたりを活用される方は狸小路1丁目と2丁目の間を南に、北大あたりに用がある方は北12条駅から無心で北に、それぞれ向かえば多分わかると思われます。オススメ。
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