第一章

 ――でも、断ったら何されるかわかんないし……。


「ねぇ、皆早く来なさいよ。こっちになにか変なのがあるわよ」


 前方、墓地を抜けた辺りから小塚先輩の声が響いてきた。


「噂になってたのって、ひょっとしてこれのことなんじゃない?」


「え? マジ? どんなの?」


 嬉々とした反応をみせ、瑠璃先輩が走りだす。


「おい瑠璃、あんまりはしゃいで転ぶなよ」


「子供じゃないっての」


 からかうような彼氏の呼びかけに笑って文句を返しながら、颯爽と墓地の間を抜けていく。


「わたしたちも行こうか?」


「う、うん」


 郁代に促された私も、再び歩みを再開する。


 非現実な気配をまとう空間を一歩ずつ歩き墓地を抜けると、そこに待ち構えていたのはドブのように濁った小さな池。


「何ここ? 汚らしい」


 真っ先にそう感想をくちにしたのは、郁代。


 その言葉通り、眼前に映る光景は本当に薄汚いの一言に尽きた。

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