第一章

 緑色と土色が混ざり合った池は、どう見ても魚や昆虫が生息できる環境とは思えない。


 プランクトンや糸ミミズくらいはいるだろうか。


 こんな水質の生態になんて詳しくないから断言だきないけれど、近づいて確かめてみたいとは思えない。


 まだ距離のあるこの位置からでもほんのりと悪臭が漂ってきているくらいに酷い汚染なのだ。


「瑠璃、ここが目的の場所だったんでしょう?」


 一番池に近い所に立っていた小塚先輩が、くるりとこちらを振り返る。


「そうそう、ここ! ホントに聞いた通りの場所だからびっくり。これなら、昔ここであった事件ってのも信憑性ありそうね」


 キョロキョロと辺りを見回しながら、瑠璃先輩は躊躇いのない足取りで小塚先輩の側まで歩いていく。


「……ひょっとして、それがそうなのかな?」


 小塚先輩と並ぶようにしてピタリと止まり、瑠璃先輩は意味深な呟きを漏らして池の方を見る。


「……? あの、それって何のことですか?」

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