第一章

「薄気味悪い。日当たりさえ良ければそれほどでもなさそうだけど」


 ぐるりと周囲を見回し、そんな感想を口にする。


 瑠璃先輩の言う通り、その広場は空間こそ開けているものの、鬱蒼と茂る木々が上空をほとんど遮り日差しの侵入を妨げていた。


 そのせいで、まず全体が薄暗い。


 そこにきて、前方に広がる光景。もう何年くらい放置されているのだろう。


 まともな手入れをされなくなってから長い年月が過ぎているであろうことが、私みたいなただの学生でも一目でわかる。


 ボロボロに朽ち果てていたり、黒っぽい湿った苔に覆われた墓石の群れ。


 そんなものが、物言わぬ住民のように私たちを出迎えていた。


「……本当にあったのね、お墓。全然手入れされていないようだけれど、管理者とかはいないのかしら?」


 ここまで来たのと同様、小塚先輩はマイペースな足取りで一番近くにある墓石へと歩いていく。


「小塚先輩、危ないんじゃ……」

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