第一章
「え? 静鶴ちゃん、そういうのできる子なの?」
瑠璃先輩の暴露に、庸介さんが意外そうな声を上げる。
「瑠璃……、あんた余計なこと言ってんじゃないよ」
今度は振り返ることもなく、小塚先輩は抑えたような声音で言葉を吐き出した。
「ごめん。冗談だって。そんな怒んなくて良いじゃん。隠し事するような仲じゃないでしょう、あたしら」
反省の色もなく軽い調子でそう言うと、瑠璃先輩は何事もなかったように庸介さんの腕に絡みついたまま、にこにこと歩き続ける。
たまに吹く風が奏でる枝葉のざわめきと野鳥のさえずりが響く平穏な空間を、更にあるくこと五分。
前方に、ようやく道の終わりが見えてきた。
「そろそろ到着みたいよ」
また僅かに振り向いて、小塚先輩が言ってくる。
「あ、ホントだ。あの先だよね? 問題の場所って」
「あなたの話が本当ならね」
お気楽な瑠璃先輩へ肩を竦めて短く答え、小塚先輩はまた前を向く。
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