第一章

 たぶん、仲の良い友人を奪い自分たちの仲間にすることで、天音に精神的な追い討ちをかけるのが狙いだったんだと思う。


 それとも、私をこの歪んだグループへ取り込み、友人に迷惑をかけているというプレッシャーを与えたかったのか。


 きっちりとした理由はわからないけれど、結果としてはどちらのパターンにも当てはまるような状態になってしまっている。


「ねぇ、静鶴。あなたちょっと歩くの速いよ。一人でサクサク進んでどうすんの?」


 終始こちらへ背を向けている小塚先輩へ、瑠璃先輩が声をかけた。


 前方で揺れていた小塚先輩の長い黒髪が、僅かに角度を変える。


 肩越しに振り向いたその表情は、いたって平静だった。


 こんな山中を先頭に立ち歩いているのに、息一つ切らしていない。


「瑠璃たちが遅いんでしょう? もたもたしていると、帰るの夕方になるわよ。いくら日が長くても、こんな陰気な所夕暮れに歩くなんてわたしはしたくないんだから」

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