第一章

「おい瑠璃、誰の話だよ。そいつどこの大学だ?」


「隣町にある大学。医学生なのその人。でも安心して、あたし別に浮気とかしてないから。あたしはちゃんと庸介一筋だよ」


 よく言うなと、私は思った。


 つい二ヵ月前までは、同学年の男子に色目を使っていたくせに。


「庸介以外の男なんか、全然興味ないんだから」


 甘い声を出し庸介さんの腕に絡みつく瑠璃先輩へこっそりとため息をつき、私はさり気なく天音の側へと近づいていく。


「天音、大丈夫?」


 耳元で声をかけ、横から顔を覗きこむ。


 少し気分が悪そうに見えるが、ここまで歩いてきて疲れているのかもしれない。


「平気。これくらいもう慣れたから……」


 どこか諦めを含んだような弱々しい笑みを浮かべ、天音は答えた。


「ごめんね、助けてあげられなくて」


「いいよ。下手なことしたら珠美まで嫌がらせされちゃうでしょ。もしそんなことになったら、あたしが辛くなるし」

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