第一章

 ここにいるメンバーの中ではリーダーを気取る一つ上の先輩だ。


 半年くらい前に好きだった男子が天音に惚れているのを知ってから、こうして頻繁に干渉してくるようになった。


「いえ、あたしはそんなこと……」


 遠慮がちに視線を上げ、天音は瑠璃先輩を見つめる。


「嘘つきなよ。しょっちゅう男子に言い寄られてその気になってるくせにさ。知ってるんだよ? 三日前、あんた他校の男子にまで声かけられてたよね。良いよねぇ、ちやほやされる子はさ。遊び相手に不自由しなくない?」


 嫌味ったらしく告げ、瑠璃先輩は天音に顔を近づける。


「……あたし、付き合ってる人とかいませんし」


 天音の表情が引きつっているのが、後姿からでも想像できた。


 天音は気の強い人間ではない。


 周囲から何かを言われると、断ることができないタイプの子だ。


 まして、相手が自分より年上となった場合は尚更。


 初めて瑠璃先輩と会ったときだって、何も言い返すことができぬまま相手のペースに引きずり込まれてしまったのだ。

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