第一章
1
綺麗だと思えた桜の花も咲き終わり緑が眩しい葉桜になると、途端に毛虫の雨が降り出すのが私は子供の頃から大嫌いだった。
幼稚園に通っているとき、ブランコの真上に生い茂る葉桜の中から落下してきた毛虫が私の頭に乗ったあの瞬間の嫌悪感は今でもしつこく記憶の中に刻み込まれている。
それ以来私は、花が散り始めたら桜の下を歩くのは極力さけて生きることを続けてきた。
ただ、それでも。
長く生きていれば、避けきれない事態に飲み込まれてしまうこともあるわけで。
七月四日、土曜日。午後一時四十分。
休日の、まだお昼を過ぎたばかりの時間帯に、私は細い山道を歩き続けていた。
左右にそびえる大きな木々は、全て桜の木。
春になれば桜のトンネルとして一部の地元人には有名らしいけど、それ以外の人には何故か知られていないという、そんな空間。
さすがにそろそろ毛虫の脅威は過ぎている時期のようだけれど、それでも万が一視界に捉えてしまったらと思うと目のやり場が定まらない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます